[戦後最長政権] 実績を伴っているのか
( 8/25 付 )

 安倍晋三首相は通算在職日数がきのうで2799日となり、佐藤栄作氏を抜いて戦後最長となった。11月19日には戦前の桂太郎の2886日に達し、歴代1位となる見通しだ。
 第1次政権時の2007年参院選では惨敗を喫したものの、政権に復帰した12年12月以降は森友・加計学園問題などで内閣支持率が一時急落した時期を除いて50%前後の支持率を維持、安定した政権運営を続けている。
 しかし、長期の安定政権に見合うだけの実績を上げてきたかといえば、甚だ疑問である。安倍首相の自民党総裁としての任期は残り2年余りである。「1強」体制におごらず、山積する課題に取り組んでもらいたい。
 経済政策アベノミクスは依然、道半ばだ。経済成長に一定の効果をもたらしたとはいえ、地方や中小企業はいまだに恩恵を実感できていない。
 政策の柱である日銀による大規模金融緩和も、目標の物価上昇率2%を達成していない。むしろ、超低金利が長期間続き、金融機関の収益を圧迫するなど副作用への懸念が高まっている。
 さらに、10月の消費税率引き上げや米中貿易摩擦の影響を考えると、景気の先行きは決して楽観できない。
 憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を一部容認し、それを受けて安全保障関連法を成立させた。安倍首相は実績と自負するが、世論が二分したまま数の力で押し切った。立憲民主党など野党は関連法の廃止を訴えている。
 外交分野も一向に進展が見られない。日本人拉致問題解決に向けた日朝首脳会談は実現のめどがつかず、北方領土問題を含むロシアとの平和条約締結交渉も足踏み状態が続く。
 さらに、韓国との関係も元徴用工問題などを発端に急激に冷え込んでいる。韓国政府は日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄、信頼関係に大きな亀裂が生じている。
 佐藤元首相は在職中、韓国との国交を樹立したほか、小笠原諸島と沖縄の返還を実現した。「戦後外交の総決算」を掲げる安倍首相も、こうしたレガシー(政治的遺産)と呼ばれる実績を残したいに違いない。
 外交分野とともに、首相がレガシーにしようとしているのが憲法改正ではないか。7月の参院選後、「少なくとも議論は行うべきだというのが、国民の審判だ」と胸を張った。
 だが、参院選の結果を受けて共同通信社が実施した全国電話世論調査では、安倍政権が優先して取り組むべき課題は「年金・医療・介護」「景気など経済政策」が上位を占めた。首相の下での改憲には過半数が反対した。
 まずは国民の最大の関心事である社会保障改革や景気対策に注力すべきである。国民の声に背を向けるようなレガシーづくりはかえって汚点を残す。