[馬毛島売買合意] 政府は丁寧に説明せよ
( 12/3 付 )

 政府はきのう、米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)の移転候補地となっている西之表市馬毛島について、約160億円で買収することで地権者のタストン・エアポート(東京)と合意したと正式発表した。
 馬毛島は、2011年6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書で移転候補地に明記され、売買交渉を進めていた。菅義偉官房長官は「早急に恒久的な施設を整備できるよう、引き続き取り組む」と述べた。
 懸案となっていたFCLP施設の確保に、一定のめどがついたことで、訓練移転に向けて大きく動き出す可能性がある。だが、地元の種子島には根強い反対の声がある。政府は強引に計画を進めてはならない。地元への丁寧な説明を強く求めたい。
 八板俊輔・西之表市長はきのうの市議会本会議で「FCLP移転は地元の理解を得られていない状況だ。FCLP以外のふさわしい活用策の実現へ取り組んでいる」と述べ、慎重に対応する考えを改めて示した。
 馬毛島は西之表市の西12キロにある面積約8平方キロの無人島で、大部分はタストン社が所有する。政府は今回、大半の土地の売買契約を交わし、残る土地も購入する方針という。
 FCLPは元々、米軍厚木基地(神奈川県)で行っていたが、騒音被害の深刻化で1991年から硫黄島(東京)で暫定的に実施している。ただ、在日米軍再編の一環で艦載機は昨年3月、厚木から岩国基地(山口県)に移駐を完了。防衛省は馬毛島に絞った形で交渉を進めていた。
 防衛省は今後、FCLP用の滑走路や施設を造成する予定だ。週内にも環境影響評価(環境アセスメント)に向けた調査が行われる見込みという。移転計画では、南西諸島の防衛態勢の強化と、災害対応拠点となる自衛隊訓練施設を整備する。
 種子島などでは騒音など環境悪化に対する懸念は根強い。事故への不安もある。受け入れ賛否が最大の争点となった2017年3月の西之表市長選では、移転反対派の八板氏が初当選。市議会も反対派が大半を占めた。
 市議会は今年2月、訓練移転や自衛隊施設整備を前提とした土地売買交渉に反対する意見書を可決した。防衛や安全保障の分野は国の専権事項といわれるが、こうした地元の意向を軽んじてはなるまい。
 反対派住民は休眠状態だった連絡会を再結成、「将来の孫子のために自然や平和を守ろう」と訴えた。一方、賛成派は交付金や開発工事で地域活性化につながると期待する。
 重要なのは、政府が地元の声に真摯(しんし)に向き合い、説明を尽くすことである。地元の将来に関わることだ。拙速は許されない。