[性暴力逆転有罪] 被害者守る法改正必要
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 女性が性被害を訴えた裁判で昨年3月、無罪判決が4件続いた。このうち2件で今年、逆転有罪判決が出た。
 福岡高裁は先月、酔いつぶれた女性への準強姦(ごうかん)罪に問われた男に懲役4年を言い渡した。今月は、19歳の実の娘に繰り返し性交を強いたとして準強制性交罪に問われた父親に名古屋高裁が地裁の無罪判決を破棄し、懲役10年の判決を言い渡した。
 だが、罪の立証は依然ハードルが高い。現行の刑法は被害者が抵抗できないほどの暴行や脅迫などがなければ罪に問えないからだ。今年は改正刑法の性犯罪規定の見直しの年にあたる。被害の実態に即した法改正を求めたい。
 性犯罪関連規定を大幅に見直した改正刑法は2017年に施行された。「強姦罪」は「強制性交罪」になり刑罰も厳しく改められた。
 しかし、強制性交罪は被害者の抵抗を著しく困難にする「暴行・脅迫」が要件で、準強制性交罪は著しく抵抗できない状態(抗拒不能)を立証しなければ罪に問えない。
 無罪判決となった4件は、いずれも性被害の実態を認定したのに「抵抗ができなかったわけではなかった」などと判断。支援団体や専門家から「被害者心理を理解できていない」と司法への批判が起きた。
 内閣府が18年に発表した調査報告書によると、女性の約13人に1人は「無理やり性交等された」経験があった。加害者の約5割が顔見知りだった。そして約6割の被害女性がどこにも相談していなかった。
 法律のハードルが高い上、「落ち度があった」と被害者を責める風潮があるからだ。性暴力被害を実名で訴えたジャーナリストの伊藤詩織さんは多くの誹謗(ひぼう)中傷に苦しんだ。被害者が泣き寝入りせざるをえないこれらの背景を直視すべきである。
 時効の壁もある。強制性交罪の場合10年で時効が成立する。鹿児島県の「性暴力被害者サポートネットワークかごしま」には10年以上前の相談も寄せられる。長い時間を経てようやく被害を口にできる人は少なくない。加害者は忘れても被害者は忘れられず苦しみは続く。性暴力被害が「魂の殺人」といわれるゆえんである。
 性暴力に抗議する「フラワーデモ」が今月まで鹿児島を含む全国各地で行われた。女性たちが「私たちは黙らない」と上げた声が社会に届き始めている。
 被害者団体などは強制性交罪から暴行・脅迫の要件をなくし、同意のない性交はすべて罰することを求めている。同意の有無の証明は困難との指摘もあるが、海外では明確な同意以外は不同意と解釈する国もある。国はそうした例も参考に法改正の見直しに取り組んでほしい。