[緊急事態解除 催事の中止] 伝統の灯を消さぬよう
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 新型コロナウイルスの感染拡大で、地域の伝統行事やスポーツ大会などの中止や延期が相次いでいる。緊急事態宣言は解除されたが、当面この状況は変わりそうにない。
 爆発的感染や医療崩壊を防ぐため、「3密」は避けなければならない。多くの人が集まる催し事の開催を見送るのは残念だが、市民の責務だろう。
 スポーツや文化的イベントは住民の楽しみであり、地域を活気づけるのに欠かせない。今は我慢せざるを得ないが、コロナ後を見据えて新たな形での催事を模索したい。
 九州初の新型コロナ感染者が福岡市で確認された2月20日、鹿児島市などでつくる実行委員会は10日後に迫った鹿児島マラソンの中止を発表した。5回目で初の中止である。この頃から急に仕事がなくなったと、県内のイベント業者は話している。
 同26日には安倍晋三首相が、大規模なスポーツや文化イベントの中止や延期、規模縮小を要請した。自粛要請に法的根拠はなく、政府は「あくまで主催者に判断してもらう」と説明した。
 強制力を伴わず、国が補償の責務を負わないやり方は、4月に発令した緊急事態宣言に伴う自粛要請と同様だ。
 首相は宣言に先立ち、芸術やスポーツの必要性に触れ「困難にあっても、文化の灯は絶対に絶やしてはなりません」と述べた。それならば、その意義を前面に出して自粛を要請すると同時に経済的支援策を示すべきだった。
 政府は延期や中止したコンサート、演劇などを改めて開催する場合の支援策を、ようやく本年度第2次補正予算案に盛り込んだ。実行を急ぐとともに制度の充実を考えてほしい。
 地域活性化を目指す行事も影響は深刻だ。本来なら、これから本番を迎える夏祭りや花火大会が早々に取りやめを決めている。
 8月に予定された「かごしま錦江湾サマーナイト大花火大会」は時期未定のまま延期になっている。
 川内川花火大会は1959年に始まって以来、悪天候による延期を除いて初の中止が決まった。主催する川内商工会議所はコロナ禍の終息が見通せないことに加え、市内の経済状況や協賛金の問題を理由に挙げている。
 コロナ後も経済再生とともに、「新しい生活様式」に沿った祭りの在り方が求められよう。
 民俗芸能や催事伝統の出し物なども軒並み中止になった。中には過疎化の進む地域でほそぼそと受け継がれてきたものも多い。発表の場がなくなったことで継承の機運が損なわれないか心配だ。伝統を守ることの重要性を行政も社会もしっかりと認識し、支えていく必要がある。