[マイナンバー] 信頼なしには広がらぬ
( 8/2 付 )

 政府はマイナンバーの活用範囲の拡大に向けた動きを加速させている。現在は社会保障、税、災害対策に限定されている個人番号を預貯金口座と結びつける「ひも付け」の義務化や運転免許証との一体化などを検討している。
 行政事務の効率化を目的として2016年に制度が始まって4年半。カード交付率は今年6月1日時点で16.8%にとどまる。背景には、政府への詳細で広範な個人情報の提供や情報漏えいに対する国民の不安がある。
 活用拡大を目指すなら、徹底した情報管理体制など国民が信頼できる仕組みを構築することが必要である。
 高市早苗総務相は6月、マイナンバーと1人1口座をひも付けるよう義務化することを検討すると表明した。個人口座の事前登録により、災害時などに即時に個人単位で多様な現金給付が可能になるという。
 ひも付け構想が浮上したきっかけは、政府が新型コロナウイルス対策の目玉として打ち出した国民に一律10万円を配る特別定額給付金の申請で、支給が大幅に遅れたことだ。
 総務省がカード所持者にオンライン申請の積極的な利用を呼び掛けたものの、市町村職員が手作業で確認に追われるなど現場は大混乱した。
 そのため、オンライン申請自体を取りやめた自治体も相次いだ。これでは何のためのオンライン化かと、首をかしげざるを得ないありさまである。
 米国では国民への現金給付を決めてから短期間で、社会保障番号と結びつけられた口座に現金が振り込まれた。
 他の主要国でも、個人番号と口座などの個人情報がリンクされ、現金給付などに利用されている国が多い。日本は世界の潮流から大きく取り残されているという指摘もある。
 マイナンバーカードと運転免許証との一体化は、政府の作業部会で菅義偉官房長官が検討を表明した。詳細は今後詰めるが、既存の免許証の将来的な廃止も選択肢に上がっており、そうなれば国民に抵抗感が出そうだ。
 国民の懸念が消えないのは、政府のセキュリティー能力に対する不信が根強いからである。
 18年には日本年金機構から委託を受け、マイナンバー関連情報も扱う東京の会社が、契約に反してデータ入力を中国の業者に再委託していたことが発覚した。海外でも政府機関などからの情報流出は度々発生している。
 政府は口座ひも付けについて、来年の通常国会での関連法案提出を目指すという。しかし、マイナンバーに対する国民の声は賛否さまざまだ。拙速に進めては禍根を残しかねない。
 利便性の向上と個人情報の保護をどう両立させるかとの問題に答えを出すのは難しい。政府は丁寧に議論を重ねるべきである。