[自然災害激甚化] 治水対策を流域全体で
( 8/4 付 )

 鹿児島県で初となる大雨特別警報が出るなど各地で甚大な被害が出た九州豪雨からきょうで1カ月になる。爪痕は今も残り、復旧作業が続く。
 7月は中部、東北地方も局地的な大雨に襲われ、河川が次々と氾濫した。あふれた水は流域の集落や高齢者施設をのみ込んで、多くの犠牲者を出した。気候変動による水害リスクは著しく増大しているのが現状だ。
 国土交通省は洪水対策として「流域治水」に取り組むことを明らかにした。堤防やダムだけに頼らず、河川の流域一帯で貯水池整備や土地利用規制を進める。
 住民や企業とともに地域防災の総合力を発揮し、流域全体で安全なまちづくりを目指したい。
 近年、自然災害は頻発・激甚化している。地球温暖化の影響で海水温が上昇し、大雨をもたらしているためだ。
 国交省によると、2010~19年に1時間降水量が50ミリ以上を記録した雨の回数は、1976~85年に比べて約1.4倍に増えた。
 氾濫危険水位を超えた河川数も増加傾向にある。2014年は83だったが、18年は474、19年は403で、5年間で5倍に増えている。
 さらに気象庁の予測では、21世紀末の平均気温は20世紀末に比べて全国平均で4.5度上昇するとみられる。最高気温35度以上の猛暑日は、沖縄・奄美で年間54日も増えるという。
 このまま温暖化が進めば、従来の常識が通用しない災害の発生を覚悟しなければならない。
 国の治水計画はこれまで、河川管理者が堤防やダムを整備することに主眼を置いてきた。だが、時間と費用がかかり、急激な気候変動に十分に対応できなくなっていた。
 流域治水は具体的には、河川や堤防を整備しながら、ため池や田んぼの貯水機能の活用、危険な地域の開発規制、住居移転などを進める。国交省は本年度中に、全国109の1級水系で対策の全体像を策定する。
 このうち川内川と肝属川の流域では、排水・雨水貯留施設の整備や土地利用規制について、関係機関が協議する。河川本体の改修としては河道掘削や堤防強化が検討されている。
 一つの河川でも流域によって、地形や住宅地の状況は異なる。それぞれの実情に応じた水害対策を目指す流域治水は、まちづくりの一環とみることもできる。
 流域治水を円滑に進めるには、洪水時に遊水地となる土地への補償や、住宅地造成などを計画する企業側との調整も欠かせない。
 上流域と下流域の自治体や住民、企業が連携し、避難体制などソフト面の整備を含めて、被害を最小限に抑えられる対策を探りたい。