[女性の自殺増] 安全網整備を急がねば
( 11/19 付 )

 新型コロナウイルスの感染拡大で雇用や暮らしに影響が広がる中、特に女性の自殺が増えている。
 コロナ禍で家族が家にいる時間が増え、家事や育児、介護など女性の負担が増し、ドメスティックバイオレンス(DV)のリスクにもさらされているとの見方がある。
 感染収束の兆しはまだ見えず、自治体や民間団体などの相談窓口には「眠れない」「死にたい」といった悲痛な声が続々と届いている。幅広く目配りして支援を積み上げ、相談に対応する体制や経済的支援などセーフティーネット(安全網)を早急に整えなければならない。
 警察庁によると、10月の自殺者数(速報値)は2153人(鹿児島県23人)で、前年同月の1.4倍に上った。全国では4カ月連続で前年の同じ月を上回っており、女性に限ると10月は851人で、1.8倍に増えている。
 一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターは緊急リポートで、7、8月の女性の自殺者は「同居人がいる」「無職」のケースが多かったと報告した。その上で、DVや育児の悩みなどがコロナ禍で深刻化している可能性がある、と指摘した。
 女性を取り巻く状況は厳しさを増すばかりだ。総務省の8月の労働力調査で非正規雇用は前年同月から120万人減った。うち女性は84万人を占め、経済的に厳しい状況に追い込まれている人が少なくないことがうかがえる。
 当面の経済的な支援としては、雇用継続を図る雇用調整助成金の拡充や現金給付が考えられる。真に必要としている人に届くよう、対象を絞り込むことも必要だろう。中長期的には、非正規と正社員や男女間での待遇格差の是正に向けた粘り強い取り組みが求められる。
 一方、内閣府の調べでは、DV相談は5、6月、前年同月の約1.6倍に増加している。
 政府はコロナ禍がもたらす女性への影響などを検証する有識者研究会を9月に設置し、近く実態調査にも着手するという。自殺や解雇・雇い止め、DV被害などの現状と課題をしっかり把握し、実効性のある対策を講じてもらいたい。
 自殺の背景には、過労、生活困窮、育児、介護疲れ、いじめ、孤立といったさまざまな要因があると考えられる。追い込まれて取り返しがつかなくなる前に、こうした要因を速やかに取り除かなければならない。
 厚生労働省は8月、電話や会員制交流サイト(SNS)による相談窓口などをまとめたサイト「まもろうよ こころ」をホームページ上に開設した。対面に抵抗のある人も気軽に相談できる。活用してもらうよう周知に努めたい。