[株価3万円突破] 「景気の体温計」に狂い
( 2/17 付 )

 東京株式市場の日経平均株価(225種)は週明け以降、大幅反発し終値は2日連続で3万円を上回った。大台に乗ったのはバブル経済期の1990年8月以来、約30年半ぶりである。
 株価の上昇は本来、経済の先行きを明るくする。だが、2020年の実質国内総生産(GDP)はコロナ禍の影響で大きく落ち込み、景気回復の展望は開けない。株価指数は「景気の体温計」とされるが、狂いが生じている。
 こうした実体経済を反映しない株価は、市場ではバブルとの見方さえ広がっている。株価が急落すれば、企業などが保有する株式の資産価値が下がり、経営の足かせになるだけに注視していく必要がある。
 平均株価は昨年3月、コロナ禍による経済活動の停滞を懸念し、1万6000円台まで下がった。その後、世界の主要な中央銀行が大規模な金融緩和や財政出動に乗り出し、上昇基調に転じた。あふれた投資資金が株式市場に流れ込んだ結果だ。
 さらに、日本の昨年10~12月期のGDP速報値が物価変動を除く実質で前期比3.0%増、年率換算で12.7%増と大幅なプラス成長だったことが追い風になった。停止となる前の需要喚起策「Go To トラベル」で個人消費などが伸びたためである。
 日本できょうにも接種が始まるワクチンの普及で流行が沈静化するとの期待感が先行、相場を押し上げたともみられる。市場では株高は継続するとの楽観的な見方が多く、政府も21年度の実質経済成長率を4.0%と見込む。ワクチンの普及で感染「第4波」を回避し東京五輪・パラリンピック開催につなげるといったシナリオを描く。
 だが、20年の通年のGDPは11年ぶりのマイナス成長に陥った。今年1~3月期も緊急事態宣言の再発令で、マイナスになるのは確実とされる。
 景気の本格的回復にはコロナ禍の収束が不可欠だ。ワクチン接種を速やかに普及させる必要はあるが、ワクチンに抵抗感がある人が一定数いることを考えれば、接種のペースには不確実性が残る。ワクチン頼みのシナリオは危うい。
 日本経済は業種によって明暗が分かれる。トヨタ自動車など大手製造業は堅調な輸出に支えられて業績を立て直し、IT関連銘柄が株高をけん引している。一方、時短営業や自粛ムードが続く飲食、観光、小売りは厳しさを増し、無利子・無担保融資などで当面をしのいでいる中小企業は少なくない。
 株高による格差拡大も懸念材料だ。株式に投資できる富裕層はますます資産を増やしていき、余裕のない層は一段と苦境に追い込まれる。政府はコロナ禍にあえぐ業種を下支えするとともに、急激な株高の弊害にもしっかりと目を配るべきである。