[首相長男接待] 実態解明へ徹底調査を
( 2/20 付 )

 放送行政を所管する総務省幹部が、放送事業に携わる菅義偉首相の長男らから接待を受けていた問題に批判が高まっている。
 接待の時期は長男が関わる衛星放送の認可更新の直前に集中していた。野党は首相の影響力を背景に放送行政がゆがめられた可能性があるとして、追及を強めている。
 総務省は接待された幹部4人のうち2人を事実上更迭した。他の2人も含めて懲戒処分も視野に入れ、早期の幕引きを図りたい考えだ。
 しかし、官業癒着による恣意(しい)的な行政が行われていないことが明らかにされない限り、行政への不信は払拭(ふっしょく)されない。実態解明へ徹底した調査が求められる。
 首相の長男は放送事業会社「東北新社」に勤務し、総務省から衛星放送の認可を受けている子会社の役員も務めている。
 今月初め、長男らが東京都内の料亭などで昨年10~12月に総務省幹部4人を接待していたことが発覚した。最後の接待の翌日、子会社の衛星放送の認可更新が認められていた。その後の総務省の調査で、2016年以降、長男らとの会食は延べ12回に上り、タクシーチケットや贈答品を受け取っていたことも判明した。
 そのうちの一人、秋本芳徳情報流通行政局長は衆院予算委員会で、長男との会食で許認可権を持つ衛星放送に絡む話題が出たかどうかを問われ、いったんは「記憶はない」と述べた。
 しかし、秋本氏が接待を受けた際の録音として、長男とされる人物が「BS」と繰り返す音声などが公開されると一転し、これを認めた。長男も「自分だと思う」と話しているという。
 総務省は、長男は国家公務員倫理規程で接待が禁じられる「利害関係者」に当たる可能性があるとしている。許認可権のある幹部が接待会食を受け続けたのは、公平性に疑念を生じさせるあるまじき行為である。
 一方、野党は長男の接待に幹部が応じたのは「首相への忖度(そんたく)」による特別扱いだと批判を強めている。首相は総務副大臣、総務相を歴任し総務省に強い影響力を持ち、総務相当時の政務秘書官は長男が務めていた。
 加えて、総務相時代に意に沿わない課長を更迭するなど人事権を使って官僚を従わせてきた。首相の存在が官僚の忖度を生んだのではないかとの疑念がある。安倍晋三前首相に近い人物が不自然に厚遇された森友、加計両学園問題を思わせる。
 首相はこれまでの国会質疑で長男は「別人格」として議論を拒んできた姿勢を改めるべきだ。その上で自らの責任を含め、実態解明に積極的に協力して政治にも向けられている国民の不信を払拭しなければならない。