[福島原発訴訟] 避難者の苦痛に応えた
( 2/23 付 )

 東京電力福島第1原発事故で、福島県から千葉県に避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は東電だけに賠償を命じた一審判決を変更し、国の法的責任を認めた。
 原発敷地の高さを大きく超える津波が来る危険は認識し得たとし、国は東電に対する規制権限を行使しなかったことを「違法」と判断した。
 判決は慰謝料に加え、生活環境の基盤が失われた精神的損害の賠償も認めた。長期避難を強いられた住民の苦痛に応える判決と言える。
 争点は、政府の地震調査研究推進本部が2002年に公表した地震予測「長期評価」に基づき、巨大津波の襲来を予見し、対策を講じていれば事故を回避できたかどうかだった。
 長期評価は、福島県沖を含む三陸沖北部から房総沖の領域で、「過去400年にマグニチュード(M)8級の大地震が3回発生しており、133年に1回の割合で大地震が起こる可能性がある」と、東北太平洋沿岸への大津波襲来を警告するものである。
 住民側は、地震学者らが議論の末に策定した国の公式見解であり「信頼できる科学的知見だ」と主張した。
 一方、国は「精度・確度に問題があり、直ちに原子力防災に取り入れるような知見ではなかった」と反論した。
 判決は、長期評価の科学的信頼性を認定、国が福島沖の津波を評価していれば、津波が到来する危険があると認識できたとした。
 その上で、国が東電に命じ、防潮堤の設置などの対策を取っていれば「津波の影響は相当程度軽減され、全電源喪失の事態には至らなかった」とし、事故との因果関係を認めた。
 安全性に科学的な疑いがあれば、適切な対策を講じるべき国の責任を厳しく指摘したと言えよう。
 原発事故の避難者らが国と東電を訴えた集団訴訟の高裁判決は3件あり、国の責任を認めたのは2件目である。
 昨年9月の仙台高裁判決も「長期評価は科学的信頼性のある知見」と評価した。一方、1月の東京高裁判決は「国の規制権限を義務付けるだけの合理性はなかった」とし、津波の予見はできなかったと結論付けている。
 国と東電に古里喪失や健康不安に対する損害賠償を求めた集団訴訟は全国で30件と相次ぎ、原告は1万1000人を超す。住民の苦しみは計り知れない。
 東電に対しては、これまでに出た地裁判決20件、高裁判決6件の全てが賠償を命じた。ただ、国が被告となった訴訟では、国の責任を認めた地裁判決も14件中7件と判断が割れている。
 原発に万全の安全対策が求められるのは言うまでもない。福島の事故から間もなく10年、最終的に最高裁が示す統一判断に注目したい。