[英TPP申請] 自由貿易広げる好機だ
( 2/24 付 )

 日本やオーストラリアなどが参加する環太平洋連携協定(TPP)に、英国が加入を申請した。実現すれば発足後初の追加加盟となり、枠組みは12カ国に広がって、アジア太平洋を基盤とした貿易協定は欧州にも足場を持つ。
 今年、日本はTPP委員会の議長国を務め、今春にも始まる加盟交渉でリーダーシップを発揮できる立場にある。保護主義的な傾向が世界を覆い、コロナ禍で経済が停滞する中、自由貿易圏を広げる好機と捉え、協定の拡大と進化を目指したい。
 TPPは当初、「対中国包囲網」を狙って米国が主導したが、トランプ前政権が離脱。日本が中心となって交渉をまとめ、2018年に発効した。計11カ国が参加し、世界の国内総生産(GDP)の13%を占める。
 英国は地理的には環太平洋地域に位置していないものの、加盟国のうちオーストラリアやカナダなど6カ国が英連邦に含まれ、それぞれと結びつきが強い。
 ジョンソン英首相は申請に際し、「莫大(ばくだい)な経済的利益を英国の人々にもたらす新たな関係を築く」と強調している。TPPを独自の通商戦略の柱に据え、今も国内で賛否が渦巻く欧州連合(EU)離脱の成果とアピールしたい考えだ。
 既に日英間で経済連携協定(EPA)が発効している日本にとっても、メリットは大きい。関税削減や、その対象を定める原産地規則といったルールを巡り、企業はTPPとEPAの間で自社に有利な協定を適用できる。
 英国という経済大国の加入で、TPPの存在感と重みが増すことも歓迎したい。自由貿易圏の広がりは通商立国としての日本の基盤を強化し、さらなる参加国の増加が期待できる。
 とりわけ重要なのは米国の復帰だろう。バイデン政権は当面、新型コロナの影響を受けた景気低迷で国内経済の回復を優先せざるを得ない。ただ、将来の再加入を見据えれば、英国の存在がもたらす効果は小さくない。
 TPPを巡っては、参加意欲を示している中国の動向も注目していかなければならない。国有企業や知的財産の扱いなど基本的な経済、産業政策で、中国はTPPの高い自由化水準からは程遠い。
 中国にはアジア太平洋地域での影響力を拡大する狙いがあるとみられ、日本としては参加を容認しにくいのが実情だ。英国との交渉にあたって自由化の水準を安易に緩めないことが、中国へのけん制につながろう。
 世界貿易機関(WTO)が米中貿易摩擦の余波で機能不全に陥る中、先端的なルールを盛り込んだTPPは、多国間貿易協定の世界標準となる可能性を持つ。日本は国際的な責任を自覚し、より磨きをかけていく必要がある。