[生活保護費判決] 命を守る公正な制度に
( 2/25 付 )

 生活保護費の基準額引き下げを巡る訴訟で大阪地裁は、減額の根拠となった物価下落率算定などの手続きに誤りがあるとして妥当性を否定、引き下げ処分を取り消す判決を言い渡した。
 厚生労働省は物価が下がっていることなどから基準額を2013年8月から3年間で平均6.5%、最大で10%引き下げた。そのため、受給者ら42人が最低限度に満たない生活を強いられ、生存権を侵害されたとして国などを訴えていた。
 生活保護は憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度で、「最後のセーフティーネット(安全網)」とも呼ばれる。国は国民の生命と暮らしを守る公平、公正な制度づくりに努めるべきである。
 地裁が問題視したのが改定基準となる物価下落の起点や物価指数である。原油や穀物の高騰で特異な物価上昇が起きた08年を起点にし、パソコンなど教養娯楽用品を基にした厚労省独自の指数を用いていた。
 判決はこうした算定手続きについて、多くの食料品も値上がりしていた08年を起点にすれば物価の下落率が大きくなるのは明らかだったとした。
 また、独自指数を基にした下落率は、総務省が公表する消費者物価指数を基にした下落率よりも大きくなり、「統計の客観的な数値や専門的知見との整合性を欠く」と指摘。「引き下げは裁量権の逸脱や乱用があり、生活保護法の規定に反し違法」と結論付けた。
 国は減額の結論ありきで起点や指数を設けたのではないかとの指摘もある。基準額は住民税の非課税限度額や就学援助の対象を決める参考にもなるだけに公正さが欠かせない。国は客観的数値を基にした厳密な改定を求めた司法判断を真摯(しんし)に受け止めてほしい。
 判決は違憲がどうかの判断は示さなかった。同様の訴訟は鹿児島など29都道府県で約900人が起こしており、今後の審理に注目したい。
 昨年11月現在、全国で約163万6000世帯、約204万8000人が生活保護費を受給している。さらに、コロナ禍による雇用情勢の悪化で生活困窮者が一層増えることが懸念される。
 そんな中、生活保護を利用していない人は少なくないとみられる。田村憲久厚労相が昨年12月、「生活保護を受けることは国民の権利。迷わず申請してほしい」と呼び掛けたほどだ。
 困窮者を支援する団体は、生活保護申請時に福祉事務所が家族らに援助できないかどうかを確認する「扶養照会」について申請者の事前承諾などを条件にするよう求めている。
 「家族に知られたくない」といった理由が生活保護の申請を妨げる一因になっているからだ。ナショナルミニマム(国民生活の最低保障)を維持するためにも早急に改善すべきである。