[総務省幹部処分] 不透明な点がまだ多い
( 2/26 付 )

 菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」による接待問題で、総務省は国家公務員倫理法に基づく倫理規程に違反したとして、事務方ナンバー2である総務審議官ら9人を懲戒処分にした。
 首相は総務審議官当時に接待された山田真貴子内閣広報官を厳重注意するとともに、「私の長男が関係して結果的に違反行為をさせてしまった」と陳謝した。武田良太総務相は省内に外部有識者も参加する検証委員会を設け、放送行政がゆがめられた事実の有無などを引き続き調べる方針を示した。
 官僚らが自ら会食を申告せず、週刊誌が音声を公開するまで国会でも虚偽と取れる答弁を続けた経緯を振り返れば、内部の聴取だけでは限界がある。調査能力のある第三者を入れた実効性のある調査で、さらに全容解明を進めるべきである。
 総務省のこれまでの調査によると、山田氏を含む計13人が、2016年7月から20年12月にかけて、延べ39件の接待を受けた。同省は9人のほか1人を訓告、1人を訓告相当とした。東北新社側の負担は総額で約60万8000円に上るという。
 官業癒着の根深さが改めて明らかになった形だが、中でも目を引くのは、首相が重用してきた山田氏の存在である。19年11月に受けた1回の接待で支払ってもらった飲食費は、約7万4000円だった。
 山田氏は、総務省で放送行政を所管する情報流通行政局長などを歴任している。正剛氏が首相の総務相時代に秘書官を務めていたことを考え合わせれば、2人の癒着が疑われても仕方あるまい。
 ほかにも谷脇康彦、吉田真人両総務審議官や秋本芳徳・前情報流通行政局長らほとんどが放送・通信行政の中枢を担ってきた幹部である。安易に接待に応じたのはなぜか。「心の緩みがあった」という釈明では、国民の理解は到底得られないだろう。
 浮かび上がるのは、倫理規程を自覚しながら、首相への忖度(そんたく)で東北新社側からの接待の誘いを断らなかったのでは、という疑念である。正剛氏は現在、総務省から衛星放送の認可を受けた子会社の役員を兼ねる。
 忖度の延長線上で、衛星放送認可を巡って東北新社側だけを特別扱いすることはなかったか。山田氏らは「働き掛けはなかった」と主張しているが、いまだ不透明な点が多い今回の問題について、正剛氏と同社は今後の調査に積極的に協力する必要がある。
 首相が強い影響力を行使してきた総務省と正剛氏らとの間で生じた問題である。官僚の処分だけで収拾を図ることは許されない。行政に対する国民の信頼を取り戻すため、首相には調査を主導する覚悟が求められている。