[九州経済白書] 企業誘致 好機生かそう
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 九州経済調査協会が、「コロナショックと九州経済」をテーマにした2021年版九州経済白書を公表した。
 昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大は地域経済に深刻な打撃を与えている。一方、大都市への一極集中によるリスクが顕在化し、企業や人材を地方に誘致する好機でもある。
 こうした状況を踏まえ、白書が東京からの企業の本社機能移転などで分散型社会を実現することが九州経済の成長の鍵と指摘したのは的を射ていると言えよう。移転しやすい受け皿づくりなどに官民を挙げて取り組み、地方分散を推進していきたい。
 白書は九州・沖縄の20年度の実質域内総生産は前年度比マイナス6.0%で、21年度は反動から3年ぶりのプラス成長となるものの3.7%にとどまると予測する。世界的な需要減退で輸出が減りインバウンド需要も消失したことなどが要因だ。コロナ前の水準に回復するのは23年度以降と見込む。
 厳しい状況下、感染拡大以降東京都から九州へ転入する企業が増えているのは明るい兆しだろう。20年の転入超過は97件で、19年の23件から増えている。うち鹿児島県は19年には3件の転出超過だったが、20年は17件の転入超過となった。福岡、沖縄に次いで多い。
 白書は企業の本社機能誘致を進める上で必要な要素として、「広い床面積と情報通信インフラを備えたオフィスビル」に加え、東京との交通アクセス、魅力的な生活環境などを挙げる。リモートワークを活用する大都市圏からの移住者を人材として確保するには、移住者同士や地元関係者らと交流する場をつくるのが重要という。ハードとソフトの両面から魅力を磨きたい。
 一方、コロナ禍で浮き彫りになったのが、企業や行政のデジタル技術の活用の遅れである。デジタル化の取り組みを九州、沖縄、山口9県の約800社に尋ねたところ、約半数が取り組もうとしていなかった。ノウハウや人材の不足が課題になっているようだ。
 デジタル技術を使いこなすには個々の企業努力だけでは限界があろう。国の育成事業の活用やセミナーの開催など、地域を挙げて人材育成に取り組むことが必要とする提言をしっかり受け止めたい。
 また、事業展開のリスク分散を図るため異業種への参入を含めた新事業の機運が高まっていると指摘する。
 新事業の一例として、新型コロナとインフルエンザのウイルスを同時に検出できるPCR検査キットを開発した鹿児島大学発のベンチャー企業、スディックスバイオテック(鹿児島市)を紹介している。後に続く地元企業の登場が待たれる。
 コロナ禍を奇貨として経済成長のきっかけをつかみたい。変化に柔軟に対応しながら知恵を出し合う時だ。