[クロウサギ輪禍] 共生の在り方考えよう
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 世界自然遺産候補地の奄美大島と徳之島で、国の特別天然記念物アマミノクロウサギの交通事故死が2020年は計66件に上り、過去最多となった。
 背景には、天敵であるマングースの駆除が進んだことがある。クロウサギの個体数が増えて生息域が広がり、路上に出て車にひかれるケースも増えているとみられる。
 夜行性のクロウサギを事故から守るために、夜間の運転には特に注意が必要だ。世界自然遺産登録を目指す上で、改めて人間とクロウサギの共生の在り方を考えたい。
 環境省によると、交通事故死は奄美大島で50件確認され、統計を取り始めた00年以降で最多となった。徳之島では過去2番目に多い16件だった。
 事故は、夜間観察スポットとして知られる奄美市住用の三太郎峠や、瀬戸内町の網野子峠などで多発している。これまで事故が少なかった地域でも増えており、速度の出やすい下り道や見通しの悪いカーブでの輪禍が目立つ。
 環境省は警戒標識や看板を設置して注意を促している。繁殖期に入る秋から冬は、活動が活発になり行動範囲が広がるため、事故に遭いやすくなるという。運転時は速度を落とし、周囲を見渡すよう心掛けたい。
 クロウサギは、天敵から襲われるのを警戒して、見通しのよい開けた場所で活動する習性がある。沢沿いの河原や樹木が倒れた所で草を食べたり、ふんをしたりする姿が確認されている。
 見通しがいいという点で、車道はクロウサギの生活環境と似ている。生活の場に足を踏み入れているのだと、常に意識しながらハンドルを握りたい。
 環境省は市道三太郎線一帯で、夜間に車両の通行台数を制限する実証実験を進めている。走行のルールをまとめ、7月以降に試行する予定だ。クロウサギを観察できる態勢も同時に求められよう。
 マングースは奄美大島で15年度に40匹捕獲されたが、19年度は0匹となり、環境省は23年度にも根絶宣言する計画だ。野生化したノネコの捕獲も18年度に始まっている。希少種を守る取り組みは成果を上げてきている。
 一方、クロウサギが増えたことで、近年は人間との間でトラブルが起きるようになった。大和村や徳之島などで、タンカンやスモモの苗木がかじられる被害が問題となっている。
 徳之島町では新たな取り組みとして、小中学生と農家がエコツアーの一環で食害防護柵を設置。タンカンをふるさと納税の返礼品にして、被害に遭った農家を支援している。
 クロウサギはこれまで保護が最優先とされてきたが、今後はこうした農業被害を減らす対策も課題になる。今夏に予定される世界遺産登録の審査を前に、共存の道を模索していきたい。