[別姓反対文書] 地方へ圧力 容認できぬ
( 3/5 付 )

 自民党の国会議員有志が、47都道府県議会議長のうち鹿児島県を含む党所属の約40人に対し、選択的夫婦別姓制度導入に賛同する意見書を議会で採択しないよう求める文書を送っていた。
 地方議会は住民の代表機関で、独立した存在である。今回の行為は、国会議員として地方自治の在り方を何ら考慮していないと言わざるを得ない。有志議員側は圧力を否定しているとはいえ、容認できない。
 文書は1月30日付で、閣僚就任前の丸川珠代男女共同参画担当相ら自民党の保守系50人の連名である。高市早苗前総務相、衛藤晟一前少子化対策担当相、山谷えり子元拉致問題担当相といった閣僚経験者も含まれる。
 議長の1人に届いた文書では、一部議会で選択的夫婦別姓の実現を求める意見書採択が検討されていると指摘。(1)家族単位の社会制度崩壊を招く(2)民法が守ってきた「子の氏の安定性」が損なわれる可能性がある-などとして「制度創設に反対している」と明記している。
 受け取った県議会議長の1人は「国会議員が連名で文書を出せば地方議会へのプレッシャーになると思ったのかもしれない。あり得ない話だ」と批判している。大方がそう解釈したとみていいだろう。
 ジェンダー平等の旗振り役の立場となった丸川氏が名を連ねているのも理解に苦しむ。参院予算委員会でただされた丸川氏は「大臣として反対したことはない」と述べた。しかし、自身の思想に近い意見を優先し、議論が止まってしまうのではないかとの懸念は拭えない。
 選択的夫婦別姓を巡っては、結婚後も働き続ける女性が増えている中、職場で旧姓使用が認められない事例や、事実婚では子どもを持ちづらいといった声が出ている。夫婦が同じ姓であることを義務づけている国は日本以外に見当たらない。
 政府は昨夏、今後5年間の女性政策の指針となる第5次男女共同参画基本計画の策定に当たり、意見を公募した。制度導入を求めるものが約400件寄せられ、反対意見はなかった。
 このため計画には積極的な記述を入れることを検討していた。菅義偉首相が導入に前向きな発言をし、議論が前に進むことが期待された。
 ところが、自民の反対派が猛反発する。計画の文面の削除や修正を何度も要求し、計画から「選択的夫婦別姓」の文言自体が削除された。
 結局、政府は12月、大幅に後退した内容の計画を閣議決定した。今回の文書送付はこの流れに沿うものだろう。
 しかし、反対する国会議員は導入を求めている国民の声に誠実に耳を傾けた上で、主張を戦わせるべきである。これ以上議論を萎縮させてはならない。