[避難指示一本化] 明快な情報が望ましい
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 災害時の住民への避難の呼び掛けが大きく変わりそうだ。
 政府は市区町村が出す避難勧告を廃止し、避難指示に一本化する災害対策基本法の改正案を閣議決定した。今の国会で法改正し、今年の梅雨期からの運用を目指す。
 勧告と指示は1961年の法制定時に規定され、長く運用されてきた。ただ、安全のため早めの避難を促す「勧告」と、より著しい危険が迫ったときに出される「指示」が正しく理解されているとは言い難い。
 災害の危険が予想されるとき、情報を正確に把握し的確な避難行動をとることが命を守ることにつながる。新たな仕組みを周知し、定着させることが重要である。
 避難勧告は安全確保の観点から時間的な余裕を持って発令され、住民はすぐに避難を始める必要がある。指示はさらに切迫した状況で重ねて避難を促すものだ。しかし、指示が出るまで行動をとらずに逃げ遅れてしまうケースが後を絶たない。
 2019年の台風19号の被災地で暮らす約3000人に対する内閣府のアンケートで、勧告と指示の両方の意味を正しく理解していたのは17.7%にとどまった。実際に避難するタイミングは「避難指示が出た段階」とする回答が40%で最も多かった。
 これでは効果的な避難誘導につなげるのは難しい。命を守る呼び掛けは、単純明快なことが望ましい。
 こうした中、政府は19年から災害の危険度を5段階で示す「大雨・洪水警戒レベル」の仕組みを導入した。避難のタイミングを住民に数値で直感的に認識してもらう狙いだった。
 これに自治体が出す避難情報を対応させ、勧告と指示は共に上から2番目の「レベル4(全員避難)」に位置付けた。事実上の一本化によって勧告段階での速やかな避難につなげる思惑だったが、自治体からはかえって「分かりにくい」との声が出た。
 そして今回の基本法改正に伴い、政府指針で定める大雨・洪水警戒レベルも改定し、レベル4は避難指示に一本化する。簡潔になるのは歓迎できるが、相次ぐ見直しで戸惑いを招きはしないか。
 ここは、統一する「避難指示」の意味を丁寧に説明し、定着するよう努めてほしい。情報の出し方など、さらなる議論が欠かせない。
 自治体の避難情報と併せ、居住地域にどのような危険が潜んでいるのか、住民が平常時から把握しておくことも大切だ。ハザードマップなどを活用し、緊急時の避難場所や避難経路を確認するのが第一歩となろう。
 情報を正しく理解し、早め早めの行動に努める。災害時の心構えを改めて確認したい。