[東日本大震災10年・原発事故] 廃炉作業の情報丁寧に
( 3/13 付 )

 東日本大震災は地震、津波に東京電力福島第1原発事故が重なり、世界に例のない複合災害となった。福島県では今も約3万6000人が県内外で避難生活を続ける。復興を難しくしている最大の障壁は、原発の廃炉などの道筋がいまだ見通せないことである。

 地震と津波で全ての電源を失ったために起きた事故では、原子炉建屋の水素爆発などで大量の放射性物質が放出された。放射線量の高い帰還困難区域は除染を経て縮小したが、なお7市町村、計337平方キロに及ぶ。

 2041~51年の完了を目指す廃炉作業は難航している。溶融核燃料(デブリ)取り出し、処理水の処分を含め、政府と東電は山積する課題ごとの情報を迅速に、分かりやすく示していかなければならない。

 廃炉作業は先月までに3号機の使用済み核燃料プールからの燃料搬出が終わるなど、少しずつ進んできた。だが、2号機で今年開始予定だった最難関のデブリ取り出しはコロナ禍の影響で英国の作業ロボット開発が遅れ、来年にずれ込んだ。

 1~3号機に計880トンあるとされるデブリの性状はなお不明で、回収、保管方法と未知数な部分が多い。工程の遅れはある程度仕方のない面もあろう。ただし、その事情はもれなく丁寧に知らせてもらいたい。

 より早急な決断が求められるのは、廃炉の過程で増え続け、来年秋にも保管場所が限界になる放射性物質トリチウムを含む処理水の問題である。経済産業省の小委員会は昨年2月、事実上「海洋放出」に絞り込んだ。

 トリチウムは健康への影響が極めて小さいとされ、国内外の既存の原発でも海に流している。だが、この10年風評に苦しめられてきた漁業者らの反対は根強い。一方で、原発の立地自治体からは「陸上保管の継続は復興の妨げになる」との声も上がる。

 先日、福島を視察した菅義偉首相は「いつまでも決定せず、先送りはすべきではない」と明言した。政府、東電は安全性を県民、国民、さらには海外にしっかりと説明し、理解を得るべきである。風評については、漁業者らに対する補償も考える必要がある。

 政府は来年度以降、震災復興事業を福島県に重点化するよう基本方針を改定した。原発被災地の活性化へ向け、住民の帰還促進とともに新たな移住を後押しする施策として「国際教育研究拠点」の整備を打ち出している。

 福島県では地震や津波の直接死が約1600人なのに対し、避難生活中の震災関連死が2300人を超える。苦難を強いられている避難者のためにも、政府、東電は地域の未来を示しながら着実に歩みを進めてほしい。