[東日本大震災10年・脱原発] 再生エネに積極支援を
( 3/14 付 )

 東京電力福島第1原発事故による被害の甚大さは、国民に原発依存から脱却する必要性を強く感じさせた。それでも政府は、原発が「運転時に温室効果ガスを排出しない重要なベースロード電源」との考え方を変えていない。

 事故から10年の間、世界的には太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーが拡大する一方、日本は原発の代替として火力発電に頼ってきた。2019年度は火力75.8%、再生エネ18.0%、原発6.2%である。

 菅義偉首相は「50年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ」を目指す。火力に頼らないとすれば、原発や再生エネをどう位置づけるのか。政府は今夏にもまとめる次期エネルギー基本計画で明確な将来像を示す必要がある。

 福島の事故を踏まえた新規制基準に基づき、これまで原子力規制委員会の審査に合格したのは9原発16基ある。このうち川内原発1、2号機を含む5原発9基が15年以降、再稼働にこぎつけた。

 しかし、事故前に全国で54基が稼働していたことを考えると、動きは鈍い。安全対策のコストがかさむ一方で、多くの裁判を抱えるなど事業のリスクは高まっている。核燃料サイクルは破綻状態にあり、放射性廃棄物の処分の見通しがない点にも不安が募る。

 南日本新聞社加盟の日本世論調査会が実施した全国郵送世論調査では、原発を「今すぐゼロ」と答えた人は8%だったものの、「将来的にゼロ」と答えた人が68%に上った。現実的な国民感覚を捉えた数字と解釈できよう。

 政府が昨年12月に発表した「グリーン成長戦略」は、50年の電源構成の議論のための参考値として再生エネを現状の約3倍に当たる50~60%に設定した。洋上風力発電を要とする。

 ただ、欧州に比べて出遅れた再生エネ導入には課題が残る。太陽光や風力には供給の不安定さや景観破壊といった懸念があり、成否は蓄電システムの開発など今後の技術革新にかかる。

 このため、グリーン成長戦略は原発も「国際連携による小型炉技術の実証」などを明記して活用する方向性を示した。次期エネルギー基本計画の論議でも経済界からは「重要な選択肢」との意見が出ている。

 電源構成についてはよく海外との比較がなされるが、日本は国同士で電力の融通ができる欧州などと違い、独自に安定的なエネルギーを確保しなければならない難しさを抱える。

 とはいえ、多くの人の運命を変える事故を経験した国民が、原子力の恒久的な利用を受け入れられるだろうか。政府は「脱原発」を求める声に真摯(しんし)に耳を傾け、より積極的な再生エネ支援に踏み出すべきである。