[原発避難計画] 実効性はあるか点検を
( 3/20 付 )

 日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の運転を差し止めるよう9都県の住民が求めた訴訟で、水戸地裁は重大事故時の避難計画に欠陥があるとして、運転を認めない判決を言い渡した。
 自治体が策定する避難計画の不備だけを理由に運転を禁じる初の司法判断である。徹底した防災体制の整備が求められるのは必至で、再稼働を目指す各地の原発にも影響しそうだ。
 原発から大量の放射性物質が漏れた場合、発動される避難計画に欠陥は許されない。司法の指摘を重く受け止め、関係自治体は避難計画の実効性を総点検すべきだ。
 東海第2原発は首都圏唯一の原発で、2011年の東日本大震災で被災して自動停止し、原電は安全対策工事を進めながら再稼働を模索している。
 判決は、数万から数十万人が一定時間内に避難するのは困難で、原発から半径30キロ圏の県内14市町村のうち広域避難計画の策定を終えているのが5市町にとどまると指摘。策定済みの計画でも第2の避難先の確保など複数の検討課題があり、防災体制は極めて不十分だとした。
 さらに、30キロ圏の住民の生命に深刻な被害を与える恐れから「人格権侵害の危険性がある」と認定した。一方、地震や津波の想定、建物の耐震性に問題はないとした。
 東海第2原発は30キロ圏に全国の原発で最多の約94万人が住み、避難時の大渋滞が懸念されている。判決は原発の運転に実効性ある避難計画という高いハードルを課したと言える。
 避難計画は従来10キロ圏に策定が義務付けられていたが、より広範囲の住民が避難を強いられた東京電力福島第1原発事故を受け、30キロ圏に拡大された。計5層からなる原発安全対策の最後のとりでという位置付けである。
 再稼働の事実上の前提条件だが、原子力規制委員会の審査はなく策定は自治体任せだ。責任の所在が曖昧で制度的欠陥だとの批判もある。実効性を確保する仕組みを考える必要がある。
 共同通信が全国の原発30キロ圏160自治体にこのほど実施したアンケートでは住民避難に課題があるとした回答が9割に上った。複合災害時の不安や避難時の新型コロナ対策という新たな問題に苦慮する様子がうかがえる。
 九州電力川内原発(薩摩川内市)では30キロ圏9市町と県のうち、姶良市を除いて課題があると回答した。県の試算では5~30キロ圏の住民が指示に基づかず一斉に避難すると、渋滞で5キロ圏の住民が避難所に到着するまで最長で2日以上かかる。
 危機が迫る状況で住民の動きをコントロールするのは容易でない。策定した計画で住民が円滑に避難できるか改めて点検し、不断の見直しも必要だ。