[九州新幹線10年] 人の流れ変えた大動脈
( 3/21 付 )

 九州新幹線が全線開業から10年を迎えた。昨年来の新型コロナウイルス感染拡大で逆風下にあるが、本土最南端の鹿児島と福岡、さらに関西を結ぶ大動脈として着実に根づいている。
 次の10年は全線開業によって生まれた人とモノの流れを官民一体で進化させ、同時にコロナ禍で低迷する経済の再生に向けた起爆剤にしたい。
 鹿児島ルートは2004年3月、新八代(熊本県八代市)以南で運行が始まり、11年3月に博多(福岡市)まで全線がつながった。鹿児島から車で4時間程度の福岡は1時間圏となり、山陽新幹線との直通で大阪へは最短約3時間40分で行けるようになった。
 全線開業を機に年間利用者は3倍近く増え、1000万人の大台を突破。熊本地震の起きた16年度とコロナ禍の本年度を除けば堅調で、18年度は最多の1434万人、11年度以降の累計は1億2000万人に上る。
 九州新幹線の最大の効果は「鹿児島は遠い」とのイメージを払拭(ふっしょく)したことと言えよう。
 九州経済研究所(鹿児島市)など民間シンクタンク3社の共同研究リポートによると、JRを使って鹿児島を訪れた人を全線開業前の10年度と18年度で比較したところ、関西からが2.7倍に伸びた。中国、四国も倍増しており、ビジネス、観光の双方で、西日本の潜在的な需要が掘り起こされたことがうかがえる。
 福岡、熊本、鹿児島の沿線3県の企業、住民への調査でも、新幹線に対しプラス評価が多かった。全線開業前は福岡の商圏に熊本と鹿児島が取り込まれる「ストロー現象」が懸念されていたが、リポートは「負の影響は一部にとどまり、経済効果が上回った」と結論づけた。
 新幹線は沿線の街並みも変えた。鹿児島中央駅に誕生した複合商業施設・アミュプラザ鹿児島が呼び水となり、周辺ではホテルやオフィスビルの建設が相次ぎ、地価が上がった。川内駅前も開発が進む。
 鹿児島中央駅一帯は天文館と肩を並べる商業エリアに成長し、県外への買い物客流出を食い止める効果があったとされる。半面、県都への一極集中に拍車を掛けた点は否めない。
 JRから経営分離された肥薩おれんじ鉄道(八代-川内)の活用を含め、非沿線地域とのアクセスを充実させ、新幹線の恩恵を全県に波及させる取り組みの一層の強化が欠かせない。
 九州新幹線を巡る最大の課題はコロナ収束後、利用者が戻るかに尽きる。オンライン化が普及し、ビジネス客のV字回復は考えにくい。頼みはやはり観光需要だろう。
 終着駅の鹿児島としては、苦境にあえぐ観光関連の事業者を地元で支え、来るべき時にしっかり備えたい。