[東日本大震災10年・産業再生] もっと後押しすべきだ
( 3/23 付 )

 東日本大震災の被災地では生産設備の復旧が進む一方、事業所の撤退や廃業が相次ぐ。農林水産業への影響も長引いている。
 被災地の経済を支える復興事業の公需はインフラ整備の完了などによって縮小する局面に入る。国や自治体は被災地が地方産業の強みを生かした民需主導の成長に向かうよう、支援にさらに力を入れなければならない。
 復興庁によると、被災3県の製造品出荷額などはおおむね震災前の水準に回復した。産業の立て直しは着実に進んでいるとみられるものの、農林水産業を中心にいまだに厳しい状況にある事業者は少なくない。
 例えば、被災した漁港は全て陸揚げ機能を回復し、被災3県の水産加工施設は9割超が業務を再開した。しかし、売り上げが震災前の水準に戻った水産加工業者は岩手、福島はともに1割程度で、宮城も3割に満たない。
 国は震災後、県とともに復旧費の4分の3のお金を実質的に個々の事業者に出せる補助金を創設し、事業者を支えた。水産業界ではこの補助金で設備投資が過剰になり、経営難に陥る業者もいる。引き続き販路開拓などの支援に努める必要がある。
 東京電力福島第1原発事故の影響を最も受ける福島県内の事業者は、特に深刻だ。同県沖の沿岸漁業は事故直後に漁を自粛し、12年6月から日数や海域を絞って再開したが昨年の水揚げ量は10年の2割以下だ。農産物も放射性物質への懸念や生産者の避難の長期化が影響し、生産量や取引価格は事故前の水準に回復していない。行政の継続的支援はもちろん、風評の払拭(ふっしょく)を急がなければならない。
 大震災と原発事故の被害が大きかった岩手、福島両県の市町村で、企業の本社や工場、個人商店など民営事業所が大幅に減ったのも気掛かりだ。政府統計で09年と19年を比べると、岩手の12市町村、福島の15市町村は合計でそれぞれ16.8%、11.8%減少した。
 震災後に人口減少に拍車が掛かり、県外企業が撤退したり、個人事業主が店を畳んだりしているとみられる。逆に東北の中心である仙台市は増加し、二極化が進んだことがうかがえる。
 今後は地元の稼ぐ力を高めることが求められる。農水産物や観光など地域の強みを生かし、付加価値を高めて首都圏などで販売し、利益を呼び込む-。この好循環を生む戦略を、国は自治体と連携して練り上げてもらいたい。
 共同通信が昨年11月に実施した被災者アンケートで、景気や雇用など地域経済に復興の実感はないという回答が7割に上った。産業再生の機運を高めるため、住民が希望を持てる地域経済の将来像を示すことが急がれる。