[聖火リレー] 五輪開催への試金石だ
( 3/25 付 )

 東京五輪の聖火リレーが、きょう福島県からスタートする。4月27、28日の鹿児島県など全国をつなぎ、開会式の7月23日まで121日間にわたって約1万人のランナーが走る。
 新型コロナウイルスとの闘いに終わりが見えず、先日は五輪・パラリンピックとも海外からの一般観客を入れないことが決まった。国内でも大会の開催自体に悲観的な見方が収まらない中での出発である。
 それでも、聖火リレーは47都道府県859市区町村を巡る一大イベントとして、4カ月後に迫る五輪の試金石の役割を担う。沿道の応援をコントロールし、大会への機運を盛り上げるため、官民で協力して成功させたい。
 ランナーへの応募が重複を含め53万件を超えた聖火リレーだが、長引くコロナ禍で疑念を呈する意見も出ている。島根県の丸山達也知事は政府や東京都の感染対策が不十分だと指摘、県内のリレーを中止する意向を示す。
 共同通信社が先日実施した全国電話世論調査では、東京五輪・パラリンピックの今夏開催を望む人は23.2%だった。一方で中止するべきだとした人は39.8%に上り、否定的な声は依然、根強い。
 そんな中、政府、国際オリンピック委員会(IOC)などの代表による5者協議は、国外観客の受け入れを見送ることにした。五輪ならではの交流やにぎわいの場を失うのは残念だが、コロナに苦しむ世界の現実を直視すれば、やむを得ない判断だろう。
 大会の実現に向けて、次の重要な課題は、競技場の収容人員のどれぐらいの割合まで日本の観客を入れるかどうか、である。現時点では50%とする案を軸に検討されているとされ、4月にも5者協議で決めるという。
 判断に影響するとみられるのが、首都圏の緊急事態宣言解除後の日本全体の感染状況の推移だ。多くの人が沿道で応援する聖火リレーが大きく関わってくるのは間違いない。
 リレーでの感染拡大防止策として、大会組織委員会はランナーに走行2週間前から会食などを控えるほか、体調管理表の提出を求める。国民には居住地での応援自粛は要請しないものの、沿道の混雑を避けるため、インターネット中継の観覧も推奨する。
 組織委の武藤敏郎事務総長は聖火リレーが長期間にわたり、参加人数も多いことから、「恐らく陽性者は出るだろう」と予想。その上で「出たときにどう伝播(でんぱ)を防いだかが分かれば、国民の視線は変わる」とコロナ下での開催支持を広げたい考えだ。
 人々の不安を払拭(ふっしょく) するためには、トラブルが起きた際の臨機応変な対応と丁寧な発信が欠かせない。自治体を含む関係者には、しっかりと連携してリレーの運営に当たってもらいたい。