[柏崎刈羽原発] テロ対策の信頼失った
( 3/26 付 )

 原子力規制委員会は、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)のテロなどを防ぐ核物質防護設備の不備問題を巡り、東電に核燃料の原子炉装填(そうてん)など燃料の移動を禁じる是正措置命令を出すことを決めた。商業炉としては初めてとなる事実上の運転禁止命令である。
 ウランやプルトニウムなど核燃料物質は、扱い次第で核兵器の材料になり得る。テロへの懸念は国際的にも高まっている。なのに2020年3月以降、不正侵入を検知できない可能性があった、との指摘に驚くしかない。
 福島第1原発事故後、東電は経営再建の切り札として柏崎刈羽原発の再稼働を目指してきたが、事態の異常さを見れば、組織に根本的な欠陥があるのは明らかだ。政府は1年以上かかるという規制委の検査結果によっては、原発政策の見直しも考えるべきである。
 規制委と東電によると、問題は1月に協力企業の作業員が侵入検知設備を誤って壊したのを機に、規制委が休日に抜き打ち検査して判明した。故障は15カ所に上り、うち10カ所で不十分な代替措置が取られていたという。
 安全重要度を最悪レベルの「赤」と評価した際、規制委の更田豊志委員長は「意図的にやらなかったのか、知識が足りなかったのか、なめているのか。今つかみたいのはそこだ」と東電への強い不信感をあらわにした。事業者の「資格がない」とした今回の措置は当然と言えよう。
 柏崎刈羽原発ではほかにも、昨年9月に東電社員が同僚のIDカードで中央制御室に不正入室していたことが今年になって発覚した。完了したとしていた7号機の安全対策工事の一部が未完了だったことも分かった。
 17年に規制委の審査に合格した柏崎刈羽原発7号機は、今年3~4月に核燃料を装填し、6月にも新潟県議会の同意を得て早期に再稼働させる予定だったとされる。だが、ずさんな管理体制をはっきり示した一連の不祥事がこうしたシナリオを吹き飛ばした。
 政府や東電が柏崎刈羽原発の再稼働を急ぐ理由は、福島第1原発の廃炉や賠償にかかる巨額の費用を稼がなければならないからである。収支の改善が大前提となる。しかし、今回の問題で枠組み自体の見直しは避けられまい。
 川内原発のある鹿児島県として気になるのは、全国の核物質防護体制だ。電気事業連合会長を務める池辺和弘九州電力社長は「事業者は覚悟を持って核セキュリティーに対応するのは共通認識だ」と述べ、東電以外で同様の事案がないことを確認したと説明する。
 ただ東電の問題が、原発の安全対策の不信を深めたことは確かだろう。「50年に温室効果ガス排出量の実質ゼロ」を掲げて原発を重視する菅政権はもちろん、電力各社にも信頼回復に向けた真摯(しんし)な取り組みが求められる。