[高1自殺提言] 県教委は迅速に実行を
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 鹿児島市の県立高校1年の田中拓海さん=当時(15)=が2014年8月に自殺した問題で、有識者でつくるいじめ再発防止検討会は最終提言をまとめ、塩田康一知事に報告した。
 学校などの対応を「情報共有も体制も不十分で場当たり的」と批判した上で、いじめ防止策を有効に機能させるための機関の常設などを求めた。
 いじめは学校現場で日常的に起き、被害者は不登校や自殺に追い込まれかねない。県教育委員会は検討会の提言を速やかに実行に移すべきである。
 提言は自殺発生後の県教委の判断について「国の指針に沿わない対応だった」と指摘した。文部科学省の指針では、いじめ自殺の疑いがある場合、原則として外部専門家を加えた組織が「詳細調査」を行うとしている。
 だが、県教委は「学校生活に関係する要素が自殺の背景にあることを否定できない状態だったにもかかわらず、詳細調査への移行を判断しなかった」。結果的に詳細調査を決定したのは自殺発生の10カ月後だった。
 遺族の要望を受けて設置された県総務部の再調査委員会が、自殺は学校でのいじめが影響したと認定したのは発生から4年半後の19年3月である。県教委の初動のまずさが自殺の経緯や背景の解明を遅らせたのではないか。
 さらに、提言は学校側が調査の経過や結果を遺族に説明する場を設けなかったことなどが信頼関係の構築を困難にしたとし、組織的な取り組みの必要性に言及した。学校や県教委は自殺など重大な事態が起きた際の対応の在り方を検討し、教職員で共有することが欠かせない。
 こうした状況を改善するために、提言は自殺など過去の重大事態の当事者や関係者から生の声を聴く教員研修の実施を求めた。また、県教委のいじめ防止などの対策が実効的に行われるために継続的に検証する機関の設置も盛り込んだ。
 いずれも、再発防止に有効な手段となり得るだろう。他の自治体の取り組みや専門家の意見を参考にしながら、より充実した研修内容や機関づくりに努めてもらいたい。
 いじめ防止対策推進法は、いじめを「当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と定義している。たとえ軽い気持ちでも、冷やかしたり、からかったりすれば相手を深く傷つけることになりかねない。児童生徒が受け止め方の違いを学ぶ機会を設けることも大切だろう。
 県内の公立小中高校で19年度に認知されたいじめ件数は前年度より2600件余り増え、6年ぶりに1万件を超えた。県民一人一人が身近な問題として関心を高め、県教委や学校のこれからの取り組みを注意深く見守っていかなければならない。