[新高校教科書] 深い学びにつなげたい
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 文部科学省は2022年度から主に高校1年生が使う教科書の検定結果を公表した。
 「主体的、対話的で深い学び」を掲げる新学習指導要領に対応した初めての検定で、合格した教科書には随所に「問い」を設けて話し合いや考察を求める構成が目立つ。
 大学入試を意識するあまり、教員から生徒への一方通行になりがちな高校教育を変えるチャンスである。新しい教科書を活用する現場を国や自治体はしっかり支え、生徒の深い学びを実現したい。
 18年告示の新指導要領は、知識を関連付けて理解したり、課題を見いだして解決策を考えたりするまでの過程を重視する授業の充実が必要とした。これに併せ科目が大幅に再編された。
 新設された必修科目のうち、「公共」は18歳選挙権を受け主権者教育を担う。原発や尊厳死など実社会でも意見が分かれる問題を取り上げて議論を促し、政治や社会との関わり方を学ぶ。
 日本と世界の近現代史を横断的に学ぶ「歴史総合」は、数々の戦争を繰り返しながら国際化社会が形成された過程を解説し、現代に続く社会問題と関連付ける。国際社会での活躍に必要な歴史理解や多面的な思考力を身に付けるのが目標という。
 このほか、「地理総合」は災害時の行動を順を追って考えておく取り組みを紹介するなど防災教育を重視し、プログラミングを学ぶ「情報Ⅰ」には会員制交流サイト(SNS)に投稿するリスクの説明などが入った。それぞれ社会的な課題を自分事として捉えられる工夫が凝らされている。
 新しい科目の中には、担当教員が不足したり、力量にばらつきが生じたりしているものもある。文科省や各教育委員会は人材確保を図るとともに、勉強会などを重ねて指導力向上に努めなければならない。
 新型コロナウイルスやジェンダー(社会的性差)といった社会問題や、読み解く力を付けるNIE(教育に新聞を)を取り上げた例もある。社会に関心を持ち、フェイクニュースに惑わされず情報を見極める力を育みたい。
 領土問題や安全保障政策に関し、文科省は政府見解の正確な記述を求める検定姿勢を維持し、加筆や修正をしたケースもあった。こうした課題をどう多角的に考察していくのか。学校現場は工夫が求められる。
 気掛かりなのは、「知識の詰め込み型」から脱却し切れていない記載も目立つことだ。大学入学共通テストは思考力、判断力、表現力を重視するとしながら、初回の今年は細かい知識を問う従来型の出題が残った。新指導要領に対応した共通テストは25年1月に始まる。高校教育を変えるには大学入試の見直しもまた不可欠である。