[民俗芸能中止] 継承へ細やかな支援を
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 鹿児島県内の民俗芸能が、新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな影響を受けている。
 国、県の無形民俗文化財に指定されている70件の伝統芸能・行事のうち、全体の6割超にあたる44件が2020年度中止になったことが南日本新聞の調べで分かった。開催しても内容の一部見直しや規模縮小を迫られ、例年通り実施されたのはわずか2件だった。
 民俗芸能や伝統行事は、これまでも少子高齢化や過疎化の波を受け継承は容易でなかったが、コロナが追い打ちを掛けた格好だ。国や県は、地域が誇る文化財が次世代に継承されるよう、細やかな支援に努めてほしい。
 県内の無形民俗文化財は、伝統的技術を除き国指定が10、県指定が60の計70件。本紙は保存会や管理者に、昨春の緊急事態宣言から今年3月までの間の実施状況(予定含む)を尋ねた。
 その結果、国指定では甑島のトシドン(薩摩川内市)など4件が中止に、県指定では弥五郎どん祭り(曽於市)など40件が取りやめになったことが判明した。
 秋名のアラセツ行事(龍郷町)は二つの行事のうちショチョガマが中止になる中、平瀬マンカイは参加者を制限して行われた。3市にまたがる南薩摩十五夜行事のように、一部地域で規模を縮小して行われるなど、場所によって差が出たケースもみられた。
 地域の観光資源でもある薩摩硫黄島のメンドン(三島村)と悪石島のボゼ(十島村)はともに行われたが、島外からの見学ツアーは取りやめになった。貴重な財源が失われれば、文化財維持にも深刻な影響が出かねない。
 伝統芸能・行事には一定程度の人の参集が不可避なだけに、コロナ下での継続は今後も見通せない。保存会などから「不安が残る」との声が多く聞かれ、自助努力には限界がある。
 国は21年度、コロナの感染拡大によって打撃を受けた地域の無形文化遺産継承のための支援事業を実施。魅力発信のためのPR動画作成やライブ配信を行う団体を後押しする考えだ。
 ただ、鹿児島からの申請は今回なかった。担い手の高齢化で、国が想定するデジタル化自体に取り組むのが難しい保存会も少なくないのだろう。
 伝統芸能・行事は地域に根付き、人々の心をつなぐ重要な役割を果たしてきた。人を呼び込む観光の目玉でもある。コロナ下の今、どういった形で継承すべきか知恵を絞りたい。
 県文化財課は「保存会などが何を望んでいるのか、ニーズの把握に努めながら柔軟に対応していきたい」とする。県は、現行の指定文化財保護事業を活用するなどして、民俗芸能の継承をしっかりとサポートしてほしい。