[運転免許返納増] 高齢者の生活守る策を
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 鹿児島県内で運転免許を自主返納するドライバーの増加傾向が続いている。2020年は7051件に上り、2年連続で7000件を超えた。
 多くは65歳以上の高齢者で、身体機能の低下による交通事故を防ぐため、運転をやめる判断をしたとみられる。
 高齢者が免許を返納しても、安心して暮らせる社会でありたい。車の代わりとなる交通手段を確保するだけでなく、買い物や通院という日常生活への支援策を充実させることが必要だ。
 県警によると、運転免許の自主返納制度は1998年に始まった。2009年、75歳以上が免許更新する際に認知機能検査が義務付けられると、返納件数は急増。東京・池袋で高齢運転者による暴走事故が起きた19年は、過去最多の7849件となった。
 20年に返納された7051件は、15年の3956件の約1.8倍となり、大幅に増えている。65歳以上は6781件で、全体の96%を占めた。家族が事故を心配して、運転をやめるよう勧めるケースが増えているとみられる。
 全国と同様に県内でも、高齢運転者に起因する事故は多い。65歳以上が最も過失の重い「第1当事者」となった事故は、20年に1111件起きており、全事故件数の27%を占めている。
 こうした高齢者による事故を防ぐために欠かせないのが認知症対策だ。道交法はたびたび改正され、75歳以上の運転者が逆走や信号無視などの違反をしたら、臨時認知機能検査を受けなければならない。
 22年6月までに施行される改正道交法では、一定の交通違反歴がある75歳以上が免許更新する際、実際に車を運転する試験が義務付けられる。また、自動ブレーキや車線逸脱警報装置などを備えた安全運転サポート車(サポカー)限定の免許創設も盛り込まれた。
 今後も高齢運転者は増えることが予想される。身体機能に支障があればハンドルを握らない仕組みをつくると同時に、サポカーのような新たな技術開発に力を入れる必要があるだろう。
 免許を返納した高齢者が人との付き合いや買い物を避けて、家に引きこもることがないよう周囲で気をつけたい。返納後の不安を解消することは、現代社会が取り組むべき課題である。
 各自治体や事業所は免許返納者に対し、バスやタクシー料金の補助のほか、温泉利用や買い物時の割引という支援策を講じている。鹿屋市が巡回バス運賃を無料化するなど、社会全体で返納を後押しする動きが広がっている。
 交通弱者の日常の「足」を確保し、買い物代行や配達サービスにまで支援の輪を広げられるよう、行政や事業者を含む地域全体で知恵を絞りたい。そのことが免許を返納しやすい環境をつくり、悲惨な事故を減らすことにつながる。