[新卒採用] 地元定着 確かな流れを
( 4/17 付 )

 鹿児島県内の主要企業が新型コロナウイルス禍にもかかわらず採用意欲を失っていないことが、南日本新聞社が九州経済研究所(KER)と共同実施した新卒者採用アンケートで明らかになった。
 景気の先行きが見通せず、就職氷河期の再来が懸念されていただけに、企業側の姿勢は心強い。若者の人口減少やコロナ後を見据え、計画的に人材を確保したい事情もあるようだ。
 大都市での感染拡大の影響もあり、学生の県内就職志向は高まっている。魅力ある職場づくりに努め、地元定着の流れを確かなものにしたい。
 アンケートは2月~3月上旬、県内に本社や事業所のある526社に今春の採用実績や来春の予定を聞き、67%の352社から回答を得た。 
 回答した企業の6割がコロナ禍で経営環境が厳しくなっている中、今春は51%が採用した。500社を対象にした昨年までのKER調査でもほぼ半数が採用しており、この傾向に大差はない。採用人数は36%の企業が増やし、前年並みが42%に上った。
 来春は53%が採用を予定し、人数も「増加」31%、「前年並み」63%だった。採用を減らしたり取りやめたりする企業があるとはいえ、就職活動中の学生にすれば一安心といったところではないか。
 背景に少子化の進展が挙げられる。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2015年国勢調査時点で6万2556人いた県内の20~24歳人口は、35年に5万人を割り、45年には4万2000人と3割減る見込みだ。
 08年のリーマン・ショックも教訓になったとみられる。県内でもリストラや採用抑制が相次いだ。その後、景気が回復すると一転、学生優位の「売り手市場」となり、企業は人手不足に陥った。人材確保は今や事業継続を左右する経営上の最重要課題である。
 アンケートでは学生に地元志向が高まっているとの回答が目立った。コロナ禍で東京一極集中に変化が生じており、地方には追い風である。採用活動のオンライン化で地理的ハンディが解消され、県外学生との接点が増えたのも好材料だろう。
 ただ、コロナが収束すれば、業績悪化で採用を控えていた大企業も加わって人材の争奪戦が激しくなるに違いない。学生から選ばれるにはデジタルを活用した積極的な情報発信や、待遇面の向上をはじめ働きやすい環境の充実がますます重要になる。
 地元に目を向け始めた学生は企業にとって頼もしい存在である。同時に、これからの鹿児島を担っていく貴重な人材だ。県内企業に就職した大学生と高校生が3年以内に辞める割合は4割前後と高く、全国平均を上回る実態がある。採用後の目配りも欠かせない。