[デジタル法案] 監視社会の懸念払拭を
( 4/21 付 )

 デジタル庁設置を柱としたデジタル改革関連法案の国会審議が大詰めを迎えている。
 コロナ禍で露呈した行政のデジタル化の遅れを解決するため、菅政権が打ち出した看板政策だ。法案は衆院を通過し、政府、与党は審議に入った参院での早期可決、成立を目指している。
 個人情報保護の在り方に大きな変更を迫り、国への権限集中が進む点に監視や統制強化といった懸念が広がる。国会でさらに議論を深め、恣意(しい)的運用を許さない歯止めを法案に盛り込み、国民の不安を払拭(ふっしょく)すべきである。
 関連法案は約60本からなり、デジタル庁設置法案のほか、個人情報保護法の見直し、公的給付金を迅速に支給できるようにするためのマイナンバーと金融機関口座の連携、押印手続きの削減などを含んでいる。
 政府は、国民の暮らしの向上につながると意義を強調する。しかし、国会審議では、個人情報保護が不十分との指摘が相次いだ。
 野党はデジタル化で個人情報保護が置き去りにされると問題視する。これに対し、政府は民間と行政機関、独立行政法人で三つに分かれる法律を1本に統合、政府の個人情報保護委員会が監視・監督するため、情報保護はこれまで以上に担保されると反論する。
 しかし、「相当な理由」のあるときは行政機関が個人情報を目的外利用できる規定は維持され、機微な個人情報がみだりに集積されかねないと警戒する識者もいる。保護委員会は民間には是正の命令ができるが、行政機関には勧告にとどまる。
 関連法成立とデジタル庁の創設、さらにマイナンバーカードの多機能化などが進むと、個人データの一層の利用や国への集中が見込まれる。行政機関に対する保護委員会の権限強化の検討が必要ではないか。
 法律家有志からは、デジタル庁が集約した情報が官邸を介して警察と共有される懸念があるとして、国家による市民の監視を厳しく禁じる立法措置を求める声が上がる。
 こうした不安は多くの国民が抱いているのではないか。政府は真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。
 自治体が条例で定める個人情報保護規定が全国的な共通ルールに改められる点にも留意したい。政府は災害時の避難者情報などが共有しやすいといったメリットを挙げる。しかし、個人情報保護は自治体が国に先行してきた歴史があり、共通化で保護規制が弱まる恐れがある。自主性を尊重するような制度上の十分な配慮が求められる。
 デジタル化については、機器の扱いに不慣れなどの理由から不安を抱えている人もいよう。政府はきめ細かく目配りし、「誰ひとり取り残さないデジタル化」も徹底すべきである。