[認知症顧客預金] 新たな仕組みの定着を
( 4/30 付 )

 認知機能が低下し預貯金を管理できなくなった本人に代わり、法的な代理権を持たない親族らでも引き出すことを条件付きで認める見解を全国銀行協会が示した。
 裁判所が関与して財産を管理する成年後見制度の利用を求めるのを基本としながら、使い道が医療費といった「本人の利益」を満たす場合などには可能としている。
 認知症を患う人はこれから急増する。「親の預金を本人の医療・介護費に充てたい」と望む家族らに対し、融通が利く顧客支援の新たな仕組みとして定着するように望みたい。
 厚生労働省によると、認知症患者数は2012年の462万人から、25年には高齢者の5人に1人に当たる700万人前後に上ると見込まれている。
 預金の引き出しは原則、本人の意思確認が必要で、親族であっても認められない。現状では成年後見制度の活用を求めており、申し立て動機は「預貯金等の管理・解約」が最多である。
 だが、家族の資産を弁護士など第三者へ委ねたり、後見人への報酬が必要になったりすることへの抵抗感は根強く、制度の利用者総数は18年末で約22万人にとどまっている。
 金融機関の窓口では、例えば「父の医療費に充てたい」と親の口座から引き出しを求める子どもともめるケースもあった。
 見解は、患者本人との面談や診断書提出などを通じて認知判断能力を失っていることが確認でき、使い道が「本人の利益に適合することが明らかな場合」に限り、親族の代理出金を認めるとした。金融庁が業界に対し柔軟な対応を求めていたことに沿った対応だ。妥当な判断と言えるだろう。
 医療費や施設入居費などを想定している。ただし、「極めて限定的な対応」であり、後見人が選ばれた後には応じないとも強調している。
 見解は法律に基づいた措置ではない。このため親族らが悪意を持って預金を引き出したり、他の親族から訴訟を起こされたりするリスクへの対策は重要だ。
 この点で、見解にあるように複数行員による本人面談や医療介護費の内容を確認するといった入念な作業は欠かせない。金融機関は不正な引き出しを防ぐために、日常的に地域の医療・福祉機関などとも関係を築き、連携することが大切だろう。
 認知症顧客の保有する金融資産は、30年度には家計金融資産全体の1割に当たる215兆円に達するとの試算もある。
 眠っている財産を安全かつ適切に活用できれば、家族の負担減少につながり、社会・経済全体にも寄与するはずだ。高齢化社会の新たな取り組みとして周知徹底に努めてもらいたい。