[奄美 世界遺産へ] 希少種対策が結実した
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 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」を世界自然遺産に登録するよう勧告した。
 政府が2003年5月、遺産候補地に選定して18年、奄美の悲願達成が確実になった。7月のユネスコ世界遺産委員会の審査で正式に登録が決まる。
 奄美の森の価値が世界的に認められたのは誇らしい。多くの希少動植物を保護する地元自治体などの地道な取り組みが実を結んだと言える。
 推薦区域は4島にまたがる。亜熱帯照葉樹林が大半を占め、大陸から取り残されて独自の進化を遂げたアマミノクロウサギなどが生息する。諮問機関は勧告で「生物多様性の保全上、重要な地域」と評価した。
 世界遺産登録に向けては、これまでさまざまな対策が講じられてきた。猛毒のハブを駆除するため島外から持ち込まれたマングースは、アマミノクロウサギやアマミトゲネズミなど在来種を捕食する実態が明らかになった。
 国は00年に本格的な駆除事業を始め、わなを設置したりマングースを追い詰める探索犬を導入したりした。捕獲チーム「奄美マングースバスターズ」も結成され、これまで3万2000匹以上を捕獲、根絶は間近とみられている。
 オオトラツグミやアマミイシカワガエルといった希少種が増え、生息範囲も広がっているという。長年、対策を積み重ねてきた成果だろう。
 政府は当初、18年の登録を目指したが、諮問機関は同年5月、「登録延期」を勧告した。推薦区域に沖縄島北部の米軍訓練場跡地が含まれていないことや飛び地が多いことを問題視、希少種対策も課題として指摘した。
 そのため政府は区域を再編、奄美大島5市町村や県などは希少種を捕食する野生化した猫(ノネコ)のわなを設置するなど捕獲事業を始めた。一方、5市町村はノネコをこれ以上増やさないよう、飼い猫の避妊去勢や個体識別用マイクロチップの装着を義務付ける罰則付きの条例に基づき、適正飼育策を強化してきた。
 また、希少動植物の盗掘や違法採取を防ぐため、パトロールが実施されるなど保護活動が盛んになっているのは心強い。島民らの自然と共生する意識も高まってきたに違いない。
 とはいえ、ノネコの捕獲数はなかなか伸びない状況が続き、野生化したヤギが山中で度々目撃され、生態系の悪化が懸念されている。また、アマミノクロウサギなどが交通事故に遭うケースが増加している。観光客の受け入れ態勢の整備も今後の課題である。
 登録されれば、「屋久島」に次いで県内2件目の世界自然遺産となる。鹿児島が名実ともに環境保全の先進県を掲げられるよう取り組みを一層加速させたい。