[ハンセン病判決] 教訓にして差別根絶を
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 ハンセン病患者に対する国の隔離政策を人権侵害と認定し、違憲と断じた2001年5月の熊本地裁判決から20年になる。原告の元患者らが求める尊厳や名誉の回復に道筋を付けた画期的な判決だった。
 この間、ハンセン病への理解はある程度進んだかもしれないが、今なお社会には多くの差別や偏見がある。新型コロナウイルス感染者への中傷や、インターネット上での悪質な書き込みなど、新たな人権侵害も生じている。
 20年前の判決は、国民が隔離政策を黙認し、結果的に差別に加担していたことを浮き彫りにした。改めて判決を教訓とし、差別のない社会を目指していきたい。
 ハンセン病患者は、星塚敬愛園(鹿屋市)や奄美和光園(奄美市)など全国各地の療養所に隔離され、社会から断絶された。「不良な子孫の出生を防止する」というゆがんだ優生思想の下、断種や堕胎を強いられた。
 元患者の家族も就学拒否や村八分、結婚差別という「人生被害」を受けた。
 こうした人権侵害を認める判決は確定しており、元患者らの被害回復や社会復帰の支援をうたうハンセン病問題基本法が整備された。国による謝罪や損害賠償手続きも進み、差別解消に向けた環境は整いつつあると言える。
 しかし、元患者の中には療養所を退所して社会に出ても、再び入所する人が少なくない。施設外での医療・介護態勢への不安や、社会に残る偏見が背景にあるとみられる。
 元患者の家族にも補償の申請に踏み切れない人たちがいる。隠してきた過去が公になる不安が根底にあるようだ。国は実効性のある啓発活動で、社会に染みついた差別意識を払拭(ふっしょく)しなくてはならない。
 新型コロナウイルス対策を強化する改正感染症法に、ハンセン病の元患者たちは感染症に対する差別や偏見を助長しかねないとして反対した。こうした声に耳を傾ける必要がある。
 人権侵害は近年もさまざまな形で顕在化している。コロナ感染拡大に伴い、「自粛警察」をはじめとする同調圧力が高まった。インターネットの会員制交流サイト(SNS)で中傷された女子プロレスラーが死去したほか、外国人を侮辱するヘイトスピーチ、障害者への差別も後を絶たない。
 差別や偏見は、自分を肯定し異なるものを排除しようとする心が生みだしていると考えられる。根絶するには正しい知識や判断力を身に付けなければならない。自身の従来の価値観を見直すことが必要な場合もあるだろう。
 20年前の判決は国の長年にわたる隔離政策を糾弾したが、実際に日常生活で差別の目を向けていたのは一般の人々である。今に通じる根深い問題に一人一人が向き合わなければならない。