[建設石綿判決] 政治主導で早期救済を
( 5/19 付 )

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い、健康被害を受けた元労働者と遺族が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた4件の集団訴訟の上告審判決で、最高裁は国の賠償責任を認めた。メーカーについても損害の一部に連帯して賠償責任を負うとした。
 判決を受け、菅義偉首相は原告団と弁護団に謝罪。政府と原告団は、国が原告1人当たり最大1300万円の和解金を支払う統一和解案で基本合意した。
 規制を怠った国の違法性を断罪した最高裁の判断は評価できる。最初の提訴から13年がたち、亡くなった人も多い。国は速やかに制度を整え、政治主導で幅広く被害者救済を図るべきだ。
 石綿は繊維状の天然鉱物で、安価で断熱性や耐火性に優れ、住宅やビルの建設資材に幅広く使われた。粉じんに発がん性があることが分かり、段階的に規制が進んだ。
 最高裁は一連の訴訟の主要な争点で統一判断を示した。
 国の責任を「石綿の危険性やマスク着用の必要性について、建材への表示と建設現場での掲示をするよう指導監督すべきだった」と指摘。二審で判断が分かれていた「一人親方」と呼ばれ、労働安全衛生法の対象外とされる個人事業主に対しても、「健康障害の恐れは労働者か否かで変わらない」と、保護対象になるとした。
 石綿の健康被害を巡っては、製造・加工工場での安全規制を怠ったとして最高裁は国の賠償責任を認めている。しかし、建設作業従事者が原告の建設石綿訴訟では、屋外での被害だとして国は争う姿勢を続けてきた。法廷闘争を長引かせ、被害者救済を遅らせてきた責任は重い。
 メーカーについても、最高裁は被害者保護を重視する考え方を示した。一方で、現場で使われていた石綿がどの企業の製品かは、原告側が特定しなければならない。今後も訴訟が続けば、被害者側の負担は大きいだろう。
 与党の示した和解案にもメーカーの参加は盛り込まれていない。原告らの被害に対するメーカーの責任割合が明確ではなく、金銭の支払いを求めるのは困難との判断だ。
 しかし、メーカー側が危険な建材を流通させ続けたことは事実である。判決を真摯(しんし)に受け止めて、被害者救済に動きだすべきだ。国は、メーカーが救済制度に参加するよう、働き掛けてもらいたい。
 与党の和解案は、健康被害の病態に応じて和解金を支払う内容だ。提訴していない被害者も救済するため、和解金と同水準の給付金を支給する制度を議員立法で創設する。
 患者は毎年500~600人増えており、高齢者が多い。苦しむ被害者を1人も取り残さない施策が求められる。