[妊娠届最少] コロナ後見据え対策を
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 厚生労働省は、全国の自治体が2020年の1年間に受理した妊娠届の件数が前年比4.8%減の計87万2227件で過去最少だったと発表した。21年の出生数は80万人を割り込み、70万人台になることが濃厚となった。
 新型コロナウイルスの感染拡大による経済情勢の悪化や、通院や里帰り出産に不安が生じたことで「妊娠控え」が起きたとみられる。
 少子化が加速すると将来の働き手の減少、社会保障の担い手不足に直結する。コロナ下で妊娠・出産に臨む人たちを支援するとともに、コロナ収束後までを見据えた具体的な少子化対策に取り組むべきだ。
 出生数は19年に初めて90万人を割り込み「86万人ショック」と呼ばれた。20年も減少する見込みで、コロナ禍がさらに追い打ちを掛けた形だ。
 20年の届け出数を月別に見ると、最初の緊急事態宣言が発令された4月前後の妊娠を反映する期間が大幅に減少している。3月ごろに妊娠した人が届ける5月は17.6%減に落ち込んだ。
 IT関連企業の昨年12月の調査では、妊娠を希望する既婚女性の13.7%がコロナの影響で「妊活を延期(休止)した」と答えた。理由は「通院などで感染リスクが高まる」「経済的な不安」などだ。
 感染の懸念に加え、広域に移動する里帰り出産や夫の立ち会いが難しくなった影響もあるとみられる。希望する出産方法がかなわず、妊娠を先延ばしにする人たちが多かったようだ。
 雇用情勢の悪化による家計の不安も大きい。20年度の有効求人倍率は前年度比0.45ポイント低下の1.10倍、完全失業率は0.6ポイント上昇の2.9%だった。解雇や給料の減少で子どもを持つことを控えた夫婦もいるだろう。雇用支援策の充実で労働者の暮らしを支えることが欠かせない。
 コロナが収束すれば出生数の一定の回復は見込める。だが、従来の国の対策が奏功しているとはいえず、減少傾向に歯止めがかかるとは考えにくい。
 内閣府が昨年10月から今年1月にかけて行った国際意識調査では、日本人回答者の6割が日本を「子どもを産み育てにくい国」と感じていた。
 一方、スウェーデンは97%、フランスは82%が「産み育てやすい」と回答。理由に「教育費の支援や軽減」「妊娠から出産後までの医療が充実」などを挙げた。子育てを支える施策の差が意識の違いに表れたといえる。
 安心して結婚、出産、育児をするためには、雇用の安定化や子育てに関わる費用の軽減、待機児童解消など多岐にわたる政策の実現が必要だ。
 政府が「こども庁」創設を検討するのであれば、単なる省庁再編に終わらせず、財源を伴った有効な少子化対策を進める組織にしなければならない。