[池田小事件20年] 不審者対策の再点検を
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 大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)に男が侵入し、包丁で児童らを次々と襲った校内児童殺傷事件から20年がたった。2年の女児7人と1年の男児1人が犠牲になり、児童や教職員の計15人も重軽傷を負った。
 校門の施錠や不審者侵入時の危機管理マニュアルの作成など全国の学校で対策が強化された。だが、その後も学校や登下校時の事件が相次ぐ。
 同じ悲劇を二度と繰り返さないために、学校と地域は子どもの命を守る不審者対策を再点検してほしい。
 事件を受けて文部科学省は2002年、危機管理マニュアルを作成、全国の学校に配布した。さらに、09年施行の学校保健安全法で各校に安全計画やマニュアル策定を義務付けた。
 学校は監視カメラや刺股を設置するなどして侵入者対策を講じた。しかし、19年には東京のお茶の水女子大付属中で秋篠宮家の長男悠仁さまの机に刃物が置かれた。今年5月にも横浜市の小学校に刃物を持った男が侵入する事件が発生した。
 警察庁の統計では19年に全国の小中高校や幼稚園などで発生した侵入事件は546件に上る。01年の約3分の1に減ったとはいえ、完全に防ぐのは難しいのが現状だ。
 池田小では事件を教訓に、犯罪や事故の際に自らを守る力を養う「安全科」の授業を実施、鹿児島県内でも訓練を重ねている学校は多い。事件はどこでも起こり得るという意識を児童や教職員が持つことが欠かせまい。
 校内だけでなく、登下校中の児童を狙った事件も後を絶たない。新潟市で小2女児が連れ去られて殺害され、川崎市ではスクールバスを待っていた児童ら20人が殺傷される事件も起きた。県内でも児童生徒への声かけ・つきまといの認知件数が増えている。
 こうした犯罪を防ぐ“特効薬”はない。不審者情報を伝えるメール配信や青色パトロール隊の巡回といった取り組みを続け、犯罪の芽を摘んでいくことが重要だ。警察、学校、地域の協力態勢を改めて確認しておきたい。
 凶悪な事件を生む背景にも目を向けなければならない。池田小の事件を機に、心神喪失者等医療観察法が施行された。重大事件で心神喪失や耗弱のため刑罰を科されなかった場合、検察官の申し立てを受けた裁判所が精神科医との合議で入院を命令できる制度だ。
 だが課題もある。ガイドラインで1年半とされる入院期間は制度開始からの11年間で平均951日と長期化している。社会復帰の促進を目的とした法が「精神障害者を社会から隔離する枠組みに変質した」との指摘もある。
 さまざまな事情で生きづらさを抱え、罪を犯してしまう人に、社会はどう対応すべきなのか。国民の関心が高まるよう議論を深める必要がある。