[党首討論] これでは共感できない
( 6/10 付 )

 与野党の党首討論が約2年ぶりに開かれた。就任後初めて臨んだ菅義偉首相が、野党4党首と一対一で論戦を交わした。
 新型コロナウイルス感染拡大に不安が広がる中、国民が最も知りたかったのは感染症対策や、政府が前のめりになる東京五輪・パラリンピック開催が可能となる具体的な判断基準だ。
 だが、菅首相は従来発言を繰り返すばかりだった。国民の共感を得る討論にならなかったのは残念でならない。
 立憲民主党の枝野幸男代表は緊急事態宣言について「3月の解除が早すぎた。同じ間違いをしないために基準を厳しくすべきだ」と追及した。
 菅首相は、ワクチン接種の効果を強調。「10月から11月にかけて、必要な国民について全て終えることを実現したい」と表明したが、解除の判断を含めた肝心の問いには明確に答えなかった。57年前の五輪の思い出を語るなど、論点ずらしと言われても仕方がなかろう。
 枝野氏は「命が失われたら取り返しがつかない。失われた命に政治は責任を取れず、そのことへの首相の認識が十分ではない」と批判した。だが、首相の政治姿勢をさらに引き出すには至らなかったと言わざるを得ない。
 共産党の志位和夫委員長は五輪開催を巡り政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長の意見を引用しつつ、「人の流れが増え、感染リスクが高くなってまで五輪を開く理由は何なのか」とただした。
 菅首相は「国民の命と安全を守るのが私の責務だ。守れなくなったら開かないのは当然だ」と、ここでもこれまでの発言を繰り返した。
 五輪開催に向けた具体的な基準は結局聞けずじまいだった。これでは開催に伴う感染拡大に不安を持つ国民は納得できまい。
 枝野氏は国会会期の大幅延長を求めたが、首相は「国会のことは国会で決めてほしい」とした。会期末は迫っている。コロナ対応などのため会期を延長し、議論を深めることが必要ではないか。
 今回の討論は1時間足らずで終了し、時間の制約から議論が消化不良に終わった感が強い。
 党首討論について与野党は7年前「月1回実施」で合意しているが、実現には程遠いのが現状だ。議員数が少ないと割り当てが数分しかないことが多いため、野党は審議時間がより長い予算委を重視している。与党も追及される機会を減らしたいとの思惑があり、与野党共に避ける傾向にある。
 丁々発止の討論を繰り広げ、国民の注目を集めてこそ本来の姿だろう。与野党は党首討論の意義付けを再確認し、開催回数や時間配分を含めて見直すべきである。