[犯罪被害者支援] 条例機に地域差解消を
( 6/12 付 )

 鹿児島県は、犯罪被害者やその家族、遺族の支援に特化した条例の制定に動きだした。有識者による検討を経て、年度内の議案提出を目指す。
 2021年版犯罪被害者白書によると、4月1日時点で条例を制定しているのは32都道府県に上り、1年前より11県増えた。九州では福岡や熊本など5県。宮崎県は今夏の施行を見込み、まちづくり条例に盛り込んでいた沖縄県は単独条例制定を進めている。
 鹿児島県内は整備をしている市町村もないのが現状だ。居住地によって支援に差が出るのは望ましくない。
 36人が死亡し、33人が重軽傷を負った京都アニメーション放火殺人事件では、被害者や遺族が広域にわたり、自治体の条例や施策の有無によって支援に開きがある実態が明らかになった。条例制定をきっかけに地域差を解消し、支援拡充を図りたい。
 04年に成立した犯罪被害者等基本法は、支援を国や自治体の「責務」と規定。鹿児島県が目指す条例は同法に沿って、基本理念のほか、県や県民の責務などを定める想定だ。被害者が必要とする施策実現につなげてほしい。
 急がれるのが経済的な支援である。公的支援として国の給付金制度があるが、被害者や遺族の暮らしを支えるのに不十分との指摘がある。申請から支給まで時間がかかるのも難点だ。事件発生直後からのしかかる葬儀や転居、治療、裁判などの費用をすぐ受給できる見舞金や貸付金を求める声は多い。
 具体的な支援を担う市町村の強化も求められる。住民に最も近い相談窓口であり、住宅確保や家事、雇用のサポートなど果たす役割は大きい。
 県内では鹿児島市と姶良市が、まちづくり条例に犯罪被害者への配慮を規定している。しかし、支援の具体化や社会の機運醸成には既存の制度だけでは限界があろう。離島など地域事情に応じた支援の質や継続性を担保するため、全ての市町村は根拠となる条例を整えるべきではないか。被害者情報の適切な管理も盛り込む必要がある。
 九州では大分県と佐賀県が、県と全市町村で条例を制定している。大分県では、犯罪で死亡または重傷病を負った被害者に、市町村が一律の見舞金を支給して県が半額を補助する制度も実現している。市町村数18と鹿児島より少ないが参考になる事例だろう。
 4月に始まった国の第4次犯罪被害者等基本計画には、会員制交流サイト(SNS)上の誹謗(ひぼう)中傷への相談体制の充実が初めて盛り込まれた。時代の変化に伴う新たな課題への対応は急務だ。性犯罪や児童虐待など潜在化しやすい被害者への支援強化も重要だ。
 犯罪被害者支援には県民の理解や協力が不可欠である。条例を基盤として、行政と県民が力を合わせて被害者を支えていかなければならない。