[アルツハイマー] 新薬の効果見極めたい
( 6/13 付 )

 米食品医薬品局(FDA)は、日本の製薬大手エーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病新薬「アデュカヌマブ」を承認した。日本の厚生労働省にも昨年12月に承認申請しており、年内にも可否を判断する可能性がある。
 アルツハイマー病の原因物質とされるタンパク質を除去し、認知機能の悪化を遅らせることを狙う初めての治療薬だ。期待通りに働けば、根本治療の大きな一歩となる。
 一方でFDAは臨床試験(治験)からは効果は不確実とし、承認条件に販売後に有効性を確認する検証試験の実施を義務付けた。副作用の報告もある。今後の検証の行方を冷静に見守り、効果を見極めたい。
 アルツハイマー病は脳の神経細胞が破壊され縮んでいく病気で、認知症の原因になる。物忘れなどの症状があり、進行すると日常生活に支障が出る。厚労省によると、国内の認知症患者は2020年に約600万人とされ、このうち6割以上がアルツハイマー病患者だ。これまでは対症療法が中心であり、新たな治療薬承認に歓迎の声が上がるのも当然だろう。
 企業側によると、3種類の治験で18カ月投与した被験者で有害なタンパク質が59~71%減少した。軽度のアルツハイマー病の患者で病気の進行を遅らせることができる可能性がある。だが、一度死んだ細胞はよみがえらないため、症状が進行し、認知機能がかなり低下した患者への有効性は確認されていない。
 FDAは治験の評価に疑問を挟みながらも病気に苦しむ患者に新たな治療法を提供するため「迅速承認」という手続きをとった。検証試験で期待通りの効果が得られなければ承認取り消しもあり得ることを忘れてはいけない。
 薬の生産に最新技術を使うため、価格も高額になる見込みだ。企業側の発表によると、4週間に1回の点滴投与で、価格の目安は年約610万円。脳内への有害なタンパク質の蓄積を確認するため、陽電子放射断層撮影装置(PET)など高額の検査も必要だ。
 日本で承認された場合、保険適用の範囲によっては、国全体の医療費を圧迫する事態にもなりかねない。だが、適用を限定して、効果が期待できるのに薬の恩恵を受けられない人が出てくる事態は避けたい。どのように使うか、難しい判断が求められそうだ。
 高齢化が進む中、認知症の治療に対する関心は高い。今回の承認をきっかけにアルツハイマー病研究が加速し、多様で有効な治療法が出現することにも期待が高まる。
 薬ができたとしても、認知症になった人や家族が安心して暮らせる環境づくりは欠かせない。社会全体で認知症への理解を深めたい。