[国会閉幕] 論戦の継続を求めたい
( 6/17 付 )

 通常国会が閉幕した。野党は新型コロナウイルス対応のため、会期を3カ月延長するよう求めたが、菅政権は「政府提出法案はほとんど成立している」として拒否した。
 東京五輪開幕が1カ月余り後に迫る中、観客の有無も決まっていない。先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明に盛り込まれた「安全、安心な方法での開催」は可能なのか。
 さらに、長引くコロナ禍で生活が困窮する人々や疲弊する業界への支援は十分なのか。論戦を回避する政権の姿勢は、国会の役割を軽視していると言わざるを得ない。
 10都道府県に発令中の緊急事態宣言は大半の地域で期限通りの20日で解除される見通しだ。ワクチン接種は進むが、東京など一部地域では既に人の流れが増加に転じている。解除されれば一層の人出増加につながりかねない。
 今後、インドで猛威を振るった変異株の広がりなどによっては「五輪期間と感染拡大の『第5波』が重なる恐れがある」と指摘する専門家もいる。国立感染症研究所などのチームも観客を入れて開催した場合、無観客での開催よりも感染者が累計で1万人増える可能性があると明らかにしている。
 それでも菅義偉首相は観客を入れた形での五輪開催へのこだわりが強いようだ。こうした専門家の見解をどう受け止め、具体策を講じるのか。国会で説明し、質疑を重ねるべきだったのではないか。観客を入れた開催に突き進むだけでは国民の理解は得られまい。
 会期中、政治分野の女性参画拡大を目指す改正推進法や、父親が育児のために休みを取得しやすくなる改正育児・介護休業法などが成立した。一方で生煮えのまま成立した法もある。
 安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法律は、私権制限や恣意(しい)的運用の恐れが指摘された。憲法改正手続きを定めた改正国民投票法はCMやインターネット広告の規制について棚上げしたままだ。
 さらに、LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案は自民党内の保守派が反発し、国会提出が見送られた。与野党で論議し、国民の関心を高める機会を逸したのは残念だ。
 「政治とカネ」の問題に絡んで自民党に所属していた衆参議員の辞職が相次ぎ、菅首相の長男が勤める放送事業会社による総務省官僚の違法接待も発覚した。政治や行政への信頼を回復したいのであれば、首相自らが説明を尽くす必要がある。そのためには率先して臨時国会召集を検討してはどうか。
 時短営業で経営が悪化した飲食店や観光客が大幅に減少した交通・ホテル業界、さらに解雇や雇い止めにあった人々への支援策も継続して進めなければならない。菅首相はリーダーシップを発揮しコロナ禍に対応すべきだ。