[河井元法相実刑] 巨額資金、自民は説明を
( 6/20 付 )

 2019年の参院選広島選挙区を巡る大掛かりな買収事件で、公選法違反の罪に問われた元法相の前衆院議員、河井克行被告に東京地裁は懲役3年の実刑判決を言い渡した。
 この選挙で初当選した妻の案里元参院議員も買収の共犯として有罪判決を受け、議員辞職している。
 ただ、自民党から巨額資金が投じられた事件の全容は解明されていない。党本部をはじめ、当時の党総裁で克行被告と近い関係にあり、自ら精力的に案里氏を支援した安倍晋三前首相らは責任を持って説明を尽くすべきだ。
 法相経験者への実刑判決は異例である。当初は無罪を主張したものの公判途中で一転、起訴内容の大半を認めて議員辞職した。保釈されていたが、判決後、東京拘置所に再び収容された。
 判決は「民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害する極めて悪質な犯行」などと指摘。「犯行の大半を認めるなど反省の態度を示していることを考慮しても、相当期間の実刑に処するのが相当」と結論付けた。厳しい非難は当然である。
 事件で浮き彫りになったのは「政治とカネ」の問題の根深さだ。河井夫妻だけの問題にとどめてはならない。
 党本部は案里氏陣営に、現職候補の10倍に当たる1億5000万円もの資金を投入した。当時官房長官だった菅義偉首相が複数回応援に入り、安倍氏の秘書も広島県内を回るなど、厳しい選挙戦の中、絶対に当選を得ようとする党本部の必死さが際立った。
 1億5000万円のうち1億2000万円は政党交付金で、使途の報告が義務付けられている。党内でこの支出を巡ってどのような話し合いをし、誰が決裁したのか。判決は入金の経緯や原資について言及しなかったが、買収に使われたとの疑念は消えない。
 党幹部らは責任を押し付け合うように釈明し、「他山の石」「政治とカネは随分きれいになってきている」と発言するなどした。国民の感覚とはかけ離れた認識にあきれる。
 押収されている関係書類が返還され次第、速やかに支出の経緯と責任の所在を明確にしなければならない。
 一方、公選法には買収された側も罰する規定があるが、刑事処分はされていない。現金を受け取ったのは100人に上り、うち40人は首長や議員だ。一部は辞職したが、大半が「司法の判断を待つ」として今も政治活動を続けている。この点にも不信感が募る。
 このところ自民所属議員の政治とカネを巡る問題は目に余る。菅原一秀前経産相、吉川貴盛元農相はともに立件され、議員辞職した。
 国民の政治を見る目は一段と厳しくなっている。秋までには衆院選も行われる。自民は政治不信を招いていることに真摯(しんし)に向き合うべきである。