[医療的ケア児] 支援法の具体化が必要
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 たんの吸引などが必要な「医療的ケア児」や家族に対する支援法が成立した。保育所や学校への看護師らの配置や、家族の相談などに応じる支援拠点を全国に設置することが柱だ。
 ケア児を世話する家族の負担は大きく、離職に追い込まれることもある。「日常生活を社会全体で支える」との理念を掲げ、適切な対応を取ることを国や自治体の責務と明記した点は評価できる。
 ただ、学校への看護師配置をどう実現させるかなどの具体策はまだ見えない。「教育を受ける」権利を保障するため、国は財政面も含めた実効的な支援策を示してもらいたい。
 自宅で暮らし、人工呼吸器や人工栄養を送る胃ろうを使うなどの医療的ケアが必要な子どもは全国に約2万人いるとされる。鹿児島県の昨年の調査では県内の20歳未満のケア児は242人だ。医療技術の進歩で増えているが、退院後を支える制度は十分ではない。
 支援法では保護者の付き添いがなくても適切な支援を受けられるよう学校などに看護師らの配置を求めた。ケアを必要としない子どもたちとともに教育を受けられるよう最大限に配慮することを盛り込み、一歩踏み込んだ形だ。
 各都道府県に設置を促す「医療的ケア児支援センター」では、情報提供や助言も行う。相談態勢の充実でケア児と保護者の双方を支えてほしい。
 課題は、学校などで医療的ケアを行う人材をいかに確保するかだ。
 文部科学省の2019年調査によると、特別支援学校や幼稚園、小中高校に在籍するケア児は全国に9845人。公立の小中学校に限ると1146人にとどまる。受け入れが進まない理由の一つが介助者の不足で、看護師が集まらないことを理由に保護者の付き添い登校を求める自治体もある。
 一方、大阪府豊中市は今年4月からケア児を介助するため市立病院から看護師を派遣。愛知県刈谷市でも18年度から民間病院の看護師が市立の特別支援学校に出向する。病院と自治体の連携は先進的な事例として注目したい。
 県内では、錦江町の田代小学校に4月、肢体不自由で人工呼吸器を着けている児童が入学した。町教委は電動ベッド付きの特別支援教室やエレベーターなどを国の補助を活用して約5500万円で整備。医療的ケアは鹿児島市などから派遣される看護師が担う。
 田崎武彦校長によると、声を掛けたり、自分にできることはないか探したりするなど、児童らは自然に関わっている。「障害の有無に関係なく認め合い、力を合わせる考え方が広がっている」と話す。受け入れが周囲の子どもに及ぼす効果は大きいといえよう。
 ケア児について社会の理解を広げるとともに、全国どこでも等しく支援や学びが受けられる仕組みを整えたい。