[大学入試改革] 現場混乱の責任は重い
( 7/3 付 )

 大学入試の在り方を検討する文部科学省の有識者会議が、2025年1月以降の大学入学共通テストでの英語民間検定試験と記述式問題の導入実現は困難だとする提言案を大筋で了承した。文科省は今夏、導入断念を正式に決定する。
 公平性や採点の正確性が懸念されることが理由だ。14年に中央教育審議会(中教審)が導入を盛り込んだ答申を出した当初から、問題点は指摘され続けてきた。課題は解決されておらず、断念は当然である。
 この間、受験生や保護者、学校現場がどれだけ振り回されたことか。混乱を招いた文科省の責任は重大である。政策決定の経緯も含め検証が必要だ。
 文科省は当初、今年1月に初めて実施した共通テストで民間検定と記述式を導入する予定だった。だが、受験生らの反発を受けて、19年11~12月に相次いで実施を見送った。
 導入の狙いとされた英語の「読む・聞く・書く・話す」技能や思考力、表現力の重要性は理解できる。しかし、提言案にある通り、民間検定は試験会場の都市部集中や高額な受験料が、受験機会の格差を生む可能性は否めない。新型コロナウイルスの影響で検定中止も相次ぎ、安定的な運営態勢が整わない問題も浮上した。
 記述式は国語と数学で行い、民間企業が業務を請け負い、採点者に学生アルバイトが含まれる計画だった。約50万人分の答案を短期間で公平に採点する態勢の構築や受験生の正確な自己採点は困難といった課題があった。
 文科省が昨年、国公私立大を対象に行ったアンケートでは、共通テストの記述式に否定的な回答が8割を占め、民間検定の活用も7割近くが否定的だった。入試改革に関する文科省の大規模調査はこれが初めてで、現状把握が後回しになったことに驚く。
 有識者会議は、民間検定と記述式は各大学の個別入試での活用が適当、とする。大学ごとの特色を生かし、有効な利用方法を探ってほしい。
 今回の大学入試改革は安倍晋三前首相が設置した政府の教育再生実行会議が13年に「知識偏重の1点刻みからの脱却」を掲げたことに端を発する。
 19年に実施を見送った後、文科省が再検討を重ねたことに政治への配慮もうかがわれた。教育以外の観点が意思決定に働いたという疑念は拭えない。
 今年の共通テストで民間検定と記述式導入が見送られたことで、大学入試センターは実務を担う予定だった事業者らの損失補償などで計5億8900万円を支払っている。
 文科省が招いた不手際を受験生の検定料が主な収入源のセンターが補償することは適切なのか。センターは「値上げなどの影響が直ちに出るわけでない」とするが、精査を求めたい。