[三菱電機不正] 安全揺るがす統治不全
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 三菱電機が、鉄道車両向け空調機器について少なくとも35年以上にわたって不正な検査をしてきたことが分かった。
 総合電機メーカーである同社は交通や電力システム、エレベーターなど幅広いインフラを手掛けている。安全を脅かす恐れがある不正は、社会や消費者に対する裏切りにほかならない。
 同社や子会社では近年、品質不正や労務などの問題が相次いでいたにもかかわらず、統治不全が改まっていなかったと言えよう。根本的な組織改革に取り組むべきである。
 鉄道車両向け空調機器は、冷暖房の制御性能や消費電力について顧客の指定する内容の検査をせず架空のデータを記入していた。
 さらに適正に検査したように偽装するため、架空の検査データを自動で作成するプログラムを使用していた。不正行為の常態化を裏付けるもので、耳を疑う無法ぶりだと言われても仕方あるまい。
 同社は「安全性に問題はない」とするが、検査不正の可能性のある空調機器は累計約8万4600台に上り、顧客はJR九州など全国に広がる。鹿児島市交通局でも、電車58両のうち41両が三菱電機製を使用していた。
 ドア開閉やブレーキに使う空気圧縮機でも検査の不正が判明し、不正の可能性があるのは約千台という。
 不祥事はこれまでも続発している。3年前、子会社で契約仕様に合わないゴム製品を出荷していたことが判明。国内の全事業所と子会社121社を対象に「全社再点検」を実施したが、今回の不正は見落とされた。
 過労やパワーハラスメントを苦にした社員の自殺が続き労災に認定され、サイバー攻撃による情報漏えいにも遭ったが積極的に公表してこなかった。
 今回の不正も社内調査で6月14日に把握していた。ところが、29日の定時株主総会で説明せず、不正が報道された後も簡単な資料を出すだけという対応だった。株主を軽視し、情報開示に及び腰な姿勢は責任感に乏しく、信頼回復の道は険しいと言わざるを得ない。
 不正発覚から4日目になってようやく開いた記者会見で、杉山武史社長は辞任する意向を表明した。組織的な不正行為と認め、「客よりも自分たちの論理を優先」「品質を絶対視するおごりがあった」と陳謝。調査結果と再発防止策を9月に公表するとした。
 三菱電機は事業部制を採用し、部門の権限が強いのが特徴と言われる。意思決定の迅速化といった利点がある一方、社内に壁が生まれやすく、経営トップの目が届きにくいとされている。
 企業風土の改善が今後の焦点となる。内向きの価値観から脱却できなければ「ものづくり大国ニッポン」の信頼までもが損なわれかねない。