[九州豪雨1年] 流域の治水対策急務
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 2020年7月の九州豪雨から1年がたった。犠牲者は熊本県が67人(うち関連死2人)と最も多く、大分県6人、鹿児島県1人など計86人に上った。
 熊本県では球磨川が氾濫、7000棟以上の家屋が浸水し、6月末時点で3675人が仮設住宅で暮らす。道路や橋などインフラ整備は進んだが、復旧・復興は道半ばである。
 恒久的な住まいの再建など被災者支援を最優先に取り組むべきである。同時に、河川の氾濫に備えた治水対策を急がなければならない。
 昨年7月3日から4日にかけて梅雨前線上に西から低気圧が移動し、南から暖かく湿った空気が流れ込んだ。熊本県南部に局地的な激しい雨を長時間もたらす線状降水帯ができ、球磨川の大規模氾濫を招いた。
 飲食やサービス業を中心に約1000軒が被災した熊本県人吉市では、仮設商店街の整備や旅館の改修が進む。国や自治体は財政面などで後押しし、街の再生に向けた動きを加速させたい。
 一方、気候変動で毎年のように大きな水害が各地で発生し、抜本的な治水対策が求められている。その一つとして国が打ち出したのが「流域治水」という考え方である。
 ダムや堤防だけに頼らず、浸水被害の危険が著しく高いエリアは許可なく住宅が建てられないといった規制のほか、避難体制の確保や安全エリアへの事前移転などを組み合わせる。企業や住民も一体となって減災に取り組むことを目指し今年4月、関連法が成立した。
 熊本県の蒲島郁夫知事は2008年、球磨川支流の川辺川ダム建設に反対を表明したが、今回の被害を受けて容認に転じた。「命と環境をともに守る」とし「緑の流域治水」を掲げた。
 だが、ダム建設の効果などに疑問の声があり、地元では賛否が割れている。環境への影響など調査、分析し、丁寧に説明していくことが欠かせまい。
 JR肥薩線は鉄橋が流されるなど甚大な被害を受け、八代-吉松(86.8キロ)は依然不通になっている。人吉市や湧水町など沿線自治体は鉄路での復旧をJR九州に申し入れているが、開通の見通しは立っていない。
 肥薩線の収支は全区間が赤字の上、鉄路の復旧には多額の費用が見込まれる。入り込み客が激減している沿線の活力をどう取り戻すのか。JRや地元自治体は住民の意見を取り入れ、対応策を検討すべきである。