[熱海土石流] 被災者救助に全力を
( 7/6 付 )

 梅雨前線の影響で大雨となった静岡県熱海市で大規模な土石流が発生した。少なくとも家屋130棟が流され、5日夕までに4人の死亡が確認された。安否不明者も多数出ている。
 土石流は複数回起きたとみられ、押し寄せた黒い土砂で周囲の景色は一変した。現場では断続的に雨の降る中、懸命の捜索が続く。まずは二次災害を警戒しながら、生存率に大きく影響する発生後72時間までの救助に全力を挙げなければならない。
 気象庁によると、市の観測地点で3日までの72時間降水量は7月の観測史上最大となった。
 一方、現場周辺は土砂災害警戒区域に指定されている。富士山や箱根山から出た噴出物が積もる火山性の地盤で、もろく、水をためやすい特性があった。そこに雨が降り続き、急峻(きゅうしゅん)な地形も相まって土石流を引き起こしたとみられる。
 県は発生源付近での造成で約5.4万立方メートルの盛り土があり、これを含む約10万立方メートルの大規模な崩落が被害を甚大化させたとみる。開発の経緯や土石流との因果関係なども含め調査を尽くしてもらいたい。
 住民に早期の避難を促す避難情報が有効に機能したかどうか検証も求められよう。
 市は今回、5段階ある避難情報で、対象地域の全住民に緊急避難を呼び掛けるレベル4の「避難指示」を出さないまま3日午前、土石流の被害に見舞われた。気象庁の予報から降水量のピークは過ぎたと判断していたという。
 そもそも避難指示は5月施行の改正災害対策基本法で、市区町村が出す避難勧告を廃止して一本化したものだ。住民に分かりやすく、早期の避難行動につなげる狙いがあった。
 避難指示を出すたび避難所設置が必要となる自治体の負担は重い。度重なれば住民の危機感が薄れる懸念もある。だが発令をためらってはならない。市の判断が適切だったか検証し、他の自治体も参考にしたい。
 また、1997年7月、出水市針原地区で21人が犠牲になった深層崩壊による大規模な土石流も雨がやんで約4時間後に発生した。雨がピークを過ぎたとしても油断は禁物だ。
 梅雨末期は前線が停滞し、豪雨や長雨による災害が起きやすい。最大限の警戒が必要だ。万一に備え、自治体のハザードマップで安全な避難ルートを確認し、避難するタイミングや方法を決めておきたい。