[五輪無観客開催] 甘い感染対策の結果だ
( 7/9 付 )

 政府は東京都に4度目の新型コロナウイルス緊急事態宣言を12日に発令する。期限は来月22日までで、開会式が2週間後に迫る東京五輪は緊急事態宣言下に開かれる異例の大会となる。
 宣言発令に伴い、都内と埼玉、神奈川、千葉各県の五輪会場はいずれも無観客で開催する。大会組織委員会、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)などの各代表による5者協議で決まった。
 政府はまん延防止等重点措置の継続で乗り切り、観客を入れて開催する方針だった。だが、都内の新規感染者が想定を超えて急増、このままでは医療提供体制が逼迫(ひっぱく)する恐れも出てきた。
 宣言の発令に踏み切り、無観客開催に急きょ転換するしかなかったと言えるだろう。後手に回ったとはいえ当然の判断だ。これまで専門家の提言を軽視してきた菅政権の責任は重い。
 都内では先月21日に緊急事態宣言から重点措置に移行後の10日間で繁華街の夜間滞留人口は2割以上増えた。最近は新規感染者が前週の同じ曜日を上回り、7日は前日の500人台から一気に900人を超えた。
 国に対策を助言する専門家組織は6月末、感染力の強いインド由来のデルタ株の影響でリバウンドが起き、7月前半には都内の1日の感染者数が1000人を突破するとのシミュレーションを示した。それでも政府は酒類提供を条件付きで午後7時まで容認してきた。
 菅義偉首相はワクチン接種の加速一辺倒で感染抑え込みを目指してきた。しかし頼みのワクチンは供給が減ってきており、人出の増加も食い止められなかった。現状の把握や感染拡大の見通しが甘かったと言わざるを得ない。
 政府は五輪の観客上限について6月には、重点措置などの解除を前提に「50%以内で最大1万人」と決定した。だが、政府の対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志は「無観客が望ましい」と政府と大会組織委員会に提言した。
 専門家の提言を退け、観客を入れた開催に固執した背景には、次期衆院選を見据えて五輪成功を演出したい菅首相の思惑と、多額の協賛金を出すスポンサーに対する大会組織委員会などの配慮があったに違いない。
 こうした対応が感染リスクについて都民に誤ったメッセージを与え、人出の増加につながった面も否定できないのではないか。
 無観客になれば、開催準備に混乱が生じるのは避けられない。ボランティアや会場の警備態勢など大幅な見直しが迫られる。選手がモチベーションを維持できるのかも心配だ。
 新規感染者は地方でも下げ止まりの傾向という。今後夏休み、お盆と人の往来が盛んになる。全国に感染を広げないために不要不急の移動を控えるよう国民に強く要請すべきである。