[熱海土石流] 安全優先し救助活動を
( 7/10 付 )

 静岡県熱海市で起きた大規模土石流は発生から1週間がたった。昨夕時点で9人の死亡が確認され、21人の安否不明が続いている。
 懸命の救出作業が続いているが、現場は急傾斜地で、雨が断続的に降り、小規模な土砂崩落が発生。作業を一時中断せざるを得ないなど捜索を阻んでいる。
 二次災害を防ぐため作業の安全を最優先に救助活動に当たってほしい。また土石流のほとんどは盛り土とみられ、開発の詳細な経緯を検証すべきである。
 土石流は3日発生、122棟が被災し、うち44棟が流失した。山肌が見えたり土砂に覆われたりした幅は最大160メートルに及ぶ。土砂は起点から約2キロ下の伊豆山港に流れ込み、海中の捜索も難航している。
 住民の暮らしも大きな打撃を受けている。水道などのライフラインは寸断され、500人以上が避難しているとみられる。避難生活は長期化が予想され、被災者の健康面への影響が懸念される。ニーズに合った支援が欠かせない。
 市社会福祉協議会などが登録を受け付けている災害ボランティアには3000人近くが応募した。だが、二次災害の恐れがあるため受け入れ態勢は整っておらず、その分復旧が遅れることになるのは残念でならない。
 国土地理院が作製した分布図などによると、土石流の起点となったのは標高約400メートルの急斜面だ。海岸までの傾斜は約11度で保たれる。
 京都大学防災研究所の松四雄騎准教授は住民らが撮影した動画や画像などを分析し、土石流は時速30キロを超える速さで住宅を押し流したと試算した。
 徒歩では逃げられないスピードだ。松四氏は「避難するには流れと直角に逃げるか、頑丈な建物に上るしかない」と指摘する。特に急傾斜地に住んでいる人は避難時の心得としたい。
 県が土石流を分析した結果、量は約5.6万立方メートルだったことが判明した。うち盛り土は約5.4万立方メートルと推計され土石流の大部分を占める。
 盛り土には条例で義務付けられた排水設備が設置されていなかった疑いが持たれている。届け出た量を超え、産業廃棄物が混ざっていたことも判明している。市と県は撤去を指導していたとするが、対応に問題はなかったか経緯を検証しなくてはなるまい。
 静岡大学防災総合センターの小山真人教授は、起点にあった造成地に現在も不安定な盛り土が約2万立方メートル残っているとみられると推計する。3日に発生した土石流の原因となった土砂のおよそ3分の1に相当するとして、再度の土石流発生を警告している。
 盛り土は全国各地にあるはずだ。調査と安全対策が急務である。