[パワハラ防止] 中小企業は対策が急務
( 7/11 付 )

 パワーハラスメント防止対策が来年4月から中小企業でも義務化される。
 だが、対応の遅れが目立っている。民間の調査では中小企業のうち6割超が、自社も対象とは認識していないことが明らかになっている。
 各企業は対策を急いだ上、研修などを通じて「ハラスメントを許さない」というメッセージを積極的に発信すべきである。
 女性活躍・ハラスメント規制法に基づく相談体制整備や被害者ケアといったパワハラ防止対策は昨年6月、まず大企業に義務化された。多くが就業規則に禁止規定を追加したり、相談窓口を明確化したりと対策を強化した。
 一方、義務化が迫っている中小企業の認知度は低い。全国の中小企業経営者約1万人を対象に大同生命保険が3月行った調査によると、義務化を知っていたのは39%にすぎない。義務化を知る企業の中でも、対策実施率は53%にとどまっている。
 周知が遅れている背景には、新型コロナウイルスの影響で経済団体などが説明会などを開けず、政府の防止啓発や企業の研修も十分実施されていないことがあるようだ。
 さらに近年、残業時間の上限規制や、正規と非正規社員との不合理な待遇差禁止といった労働法制の改正が相次ぎ、労務担当者が乏しい中小企業は対応が追いついていないことも指摘されている。
 厚生労働省の昨年10月調査では、過去3年間にパワハラを受けた従業員は31%で、うち22%は企業側がパワハラを認めた。鹿児島労働局によると、県内の労働者と事業者のトラブルを解決する個別労働紛争解決制度の利用相談件数も、パワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」が近年最多となっている。
 社会的にパワハラが問題になって相談窓口が周知されてきた面があるとはいえ、なお横行しているのは許されない。
 規制法では、違反企業には行政が勧告し従わない場合に企業名を公表できるとしているが、罰則規定はない。法的には企業頼みの面があるため、まずは各社が主体的に取り組み、従業員の意識を高めなければならない。
 中小企業の中には旧来の働き方が残っていたり、単独での研修が困難だったりするケースもあるだろう。公的機関による支援の強化を求めたい。
 コロナ禍で在宅勤務が広がり、「リモートワークハラスメント(リモハラ)」と呼ばれる嫌がらせも起きている。
 画面越しに自室や家族の姿を見せるように求めたり、常にカメラで監視したりといった事例の他に、「化粧をしろ」「子どもがうるさい」などの発言が問題視されている。リモハラも企業の防止義務対象であり、対策を講じる必要がある。