[大雨特別警報] 安全確保 改めて点検を
( 7/13 付 )

 梅雨前線に大量の湿った空気が流れ込んだ影響で、薩摩地方北部が大雨に見舞われた。
 気象庁は出水、伊佐、薩摩川内、さつま、湧水の5市町に一時、大雨特別警報を発表。5市町は5段階ある大雨・洪水警戒レベルで最も危険度が高い場合の避難情報「緊急安全確保」を初めて発令した。
 昨夕時点で死者やけが人は確認されていないが、住宅の一部損壊2棟、床上・床下浸水98棟といった被害が出ている。
 九州南部は11日に梅雨明けが発表された。しかし、大雨で地盤が緩んでいる所もあるとみられ、引き続き土砂災害への警戒が必要だ。大雨や台風による災害から身を守るため、情報収集や避難の在り方を改めて点検したい。
 雨は9日夜から10日にかけて降った。対馬海峡付近に停滞する梅雨前線に大量の水蒸気を含んだ暖かい空気が流れ込み、上空を寒気が通過して前線の活動が活発化した。
 薩摩地方では積乱雲が連続発生して同じ地域に大量の雨が降り続ける線状降水帯が確認され、鹿児島地方気象台は「顕著な大雨に関する気象情報」を県内で初めて出した。
 さつま町紫尾山で同地点の観測史上最多となる1時間雨量96.5ミリを記録するなど激しい雨が続き、各地の川は一気に増水した。伊佐市の羽月川や湧水町の川内川などで氾濫危険水位を一時超えた。
 人的被害を出さないためには早めの避難が不可欠だ。さつま町で避難した住民の一人は、2006年の県北部豪雨で屋根まで浸水した恐怖が脳裏に浮かび、「今回はすぐに避難した」と語った。過去の災害の教訓を広く共有する取り組みを一層強化したい。
 県内で出た避難情報にはレベル4の「避難指示」やレベル3の「高齢者等避難」もあり、計1600人余りが避難した。各自治体は高齢者ら手助けの要る人をはじめ住民が安全確保に適切な行動がとれたか検証し、避難情報の実効性を高める必要がある。
 また、新型コロナウイルス感染対策との両立が求められる避難所の運営も点検したい。薩摩川内市では駐車場の車内で待機する人が目立つ避難所があったという。密集を避けられるものの、車中に長時間いると体調を崩す恐れもあり、注意を要する。
 鹿児島は西に東シナ海が開けているため、海上から大量の水蒸気を含む空気が流れ込みやすい。鹿児島市で甚大な被害が出た1993年の「8・6豪雨」をはじめ、大規模災害にたびたび見舞われている。
 防災・減災には住民自身の心構えが肝心である。普段から気象情報に関心を払い、状況に応じて安全に避難できるよう備えなければならない。